「ぐるぐる目が回るようなめまいが続く…」
「何をしても体がだるくて、疲れが取れない…」
「薬を飲んでも改善しないしつこい頭痛に悩んでいる…」
こういった、体の辛い症状が長く続き、
病院で検査を受けてもはっきりとした原因が分からない…
そんなお悩みをお持ちの方はいませんか?
そういった症状が耳鼻科の処置で改善する場合もあります。
めまいや慢性的なだるさ、頭痛は、様々な病気やストレスが原因で起こることがあります。
しかし、実は鼻の奥、
のどの一番上の部分にある「上咽頭(じょういんとう)」という場所の炎症が、
これらの症状と意外な関係があることが分かってきています。
今回は、あまり知られていない慢性上咽頭炎と、
めまい、慢性疲労、頭痛との関係についてお話ししたいと思います。
上咽頭は、鼻の突き当たり、口を開けて見える「のどちんこ」のさらに上にある、
鼻腔(鼻の穴の奥)と咽頭(のど)の境目にあたる部分です。
ここは、呼吸をする空気が必ず通る場所で、
外から入ってくる空気の温度や湿度を調整したり、
ウイルスや細菌などの病原体が体の中に入るのを防いだりする、
身体の免疫の最前線のような働きをしています。
この上咽頭に炎症が起き、
それが1ヶ月以上続いてしまう状態を「慢性上咽頭炎」と呼びます。
風邪などで一時的に上咽頭が炎症を起こすことはよくありますが、
炎症が慢性化すると、鼻の奥の症状だけでなく、
体のあちこちに様々な不調(不定愁訴)を引き起こす可能性があると考えられています。
「鼻の奥の炎症が、どうしてめまいやだるさ、頭痛に関係するの?」と不思議に思われるかもしれませんね。
慢性上咽頭炎は、古くから多くの不定愁訴の原因となることが報告されています。
特に、1960年代には既に、
といった機能性身体症状と関連することが報告されています。
1960〜1970年代には慢性上咽頭炎の治療は盛んに行われていましたが、
1980年代からこれらの治療の報告は激減しました。
最近になり、研究会を立ち上げた先生たちのおかげで
また世の中で普及し始めた治療方法になります。
これらの症状(めまい感、慢性疲労感、頭痛を含む)は、
「機能性身体症候群(Functional Somatic Syndrome: FSS)」
と呼ばれる病態に含まれます。
最近の研究では、慢性上咽頭炎が、
慢性疲労症候群(ME/CFS)や新型コロナウイルス感染後遺症(long COVID)など、
機能性身体症候群と呼ばれる病態において非常に高い頻度で見られることが
報告されており、その病態に上咽頭の慢性炎症が関与していると考えられています。
慢性上咽頭炎と、全身症状を引き起こす詳しいメカニズムはまだ研究レベルですが、
いくつかの考察がされています。
出典:Nature (2024), DOI: 10.1038/s41586-023-06899-4
これらの要因が複雑に絡み合うことで、
めまいや慢性疲労、頭痛といった症状として感じられるのではないかと考えられています。
慢性上咽頭炎に対して行われる治療法の一つに、
「EAT療法(Epipharyngeal Abrasive Therapy)」があります。
これは、かつて「Bスポット療法」とも呼ばれていました。
主に塩化亜鉛などの薬剤を染み込ませた綿棒を使って、
炎症を起こしている上咽頭の粘膜を優しく擦過(こする)する治療法です。
最近では、内視鏡で上咽頭の状態を直接見ながら、
より安全かつ正確に処置を行う「内視鏡下上咽頭擦過療法(E-EAT療法)」も
行われるようになりました。
当院ではこの治療を安全に行うこと、
評価をしっかりとしながら治療ができる点において、
内視鏡下EAT療法を行っています。
この治療を受ける前に、必ずそれぞれの専門の診療科にて検査をしてもらう必要があると
当院では考えています。
様々な検査を受けて診断がつかない場合、
可能性の一つとして慢性上咽頭炎があると判断しています。
EAT療法は、慢性上咽頭炎に関連する様々な症状に対して効果が期待されています。
慢性上咽頭炎に関連する症状の中には、めまい感、慢性疲労感、頭痛といった症状が
含まれており、これらの症状が改善する可能性が過去の論文からも示唆されています。
例えば、機能性身体症候群の患者さんを対象とした報告では、
EAT療法によって症状の改善が見られたとされています。
特に、慢性疲労症候群の患者さんの症状改善(ITO先生の報告では86.8%の改善)や、
HPVワクチン接種後に機能性身体症状(頭痛や全身倦怠感、めまい、全身痛などを含む)を
呈した若い女性の症状改善(81%に改善あり)と報告されています。
また、ある耳鼻咽喉科クリニックでの検討では、
慢性上咽頭炎と診断された患者さんに対してEAT療法(生理食塩水での鼻うがい併用)を
行った結果、頭痛、めまい、肩こりを含む自覚症状のスコアが有意に改善した
ことが報告されています。
この報告では、主訴(患者さんが一番困っている症状)の改善率が79.5%でした。
全体として、慢性上咽頭炎の患者さんの約8割で、
上咽頭の局所的な所見や自覚症状の改善が期待できるという報告があります。
局所所見の改善と自覚症状の改善には有意な相関があることも示されており、
上咽頭の炎症を抑えることが症状改善につながると考えられます。
EAT療法がこれらの症状に効果をもたらすメカニズムとしては、
主に以下の3つの作用が考えられています。
これらの作用が、めまい、慢性疲労、頭痛のような症状にも良い影響を与えていると考えられます。
東京都大田区に
東京都品川区に
の3院がありますが、どの曜日・時間帯・場所でもEAT療法が可能となっています。
長引くめまい、慢性疲労、頭痛や、その他原因がはっきりしない不調には、
慢性上咽頭炎の可能性も考えられます。
当クリニックでは、内視鏡を用いて上咽頭の状態を丁寧に観察し、
慢性上咽頭炎の診断を行っています。
慢性上咽頭炎が疑われる方には、
EAT療法による治療をご提案することも可能です。
患者様一人ひとりの状態に合わせて、優しく丁寧な処置を心がけています。
また、ご自宅でできる生理食塩水での鼻うがいなどのセルフケアについても、
具体的な方法をお伝えしています。
耳鼻咽喉科では、全身状態のケアが不十分なため、
現在受診されているクリニックを続けながら、
当院にてEAT療法を行うことを勧めております
「どうしてこんなに辛いんだろう…」と一人で悩まず、
もしかしたら身体の別の場所からのサインかもしれない、
という可能性についても考えてみませんか?
慢性上咽頭炎は、耳鼻咽喉科で見つけることができる病態です。
「こんな症状、耳鼻咽喉科で相談してもいいのかな?」と思われるようなことでも、
どうぞお気軽にご相談ください。
皆様がめまいや慢性疲労、頭痛といった辛い症状から解放され、
毎日を元気に過ごせるよう、全力でお手伝いさせていただきます。