耳の病気

PPPD (持続性知覚性姿勢誘発めまい)

PPPD (持続性知覚性姿勢誘発めまい)

PPPD (持続性知覚性姿勢誘発めまい)は、2017年、めまいの国際学会であるBarany学会にて慢性めまいの原因として、新たな概念が定義されました。PPPD(Persistent Postural-Perceptual Dizziness, PPPD)は機能性疾患の概念になります。機能性疾患とは、身体のどこかに大して特に異常がないが症状はある状態ことを示しています。今までには、原因不明と言われていためまいがPPPD (持続性知覚性姿勢誘発めまい)に当てはまるということです。

学会での定義により、ドイツでの報告では、めまいの疾患の中で1番多いとされているのが、良性発作性頭位めまい症、2番目にPPPD (持続性知覚性姿勢誘発めまい)の患者さんであると報告されています。今まで日本ではざっくりと「めまい症」という診断でした。PPPDの情報発信している新潟大学耳鼻咽喉科堀井新教授によると、めまい症の中の23%がPPPDだったという報告もあります。また、メニエール病と合併すると、回転性と非回転性が混じることがあり、診断に難渋するケースもあります。

めまいは、見た目ではわからない症状のため、1人で抱えている方もいるのではないでしょうか。病院に行っても、原因がはっきりしないまま長引く慢性的なめまいに悩んでいた方も多くいらっしゃるかと思います。そんな方々が、本当はPPPDだったのではないかと言われています。

PPPDの症状は?

症状はいくつかの特徴があります。①〜④をご確認いただき、ご自身の症状をご確認ください。

①どのようなめまいなのか

□浮遊感(ふわふわした感じ)がある
□平衡異常感または不安定感がある
□自分自身あるいは外界が揺らぐ
□揺れ動く
□上下に揺れる
□はずむという疑似運動感覚

②いつめまいが起こるか

□急に立ち上がった時や振り向いた時
□歩くと起こる
□階段の登り下り
□エレベーター・エスカレーターに乗る
□人ごみに押されると起こる
□人込みで行きかう人や往来する車等、動いているものを見た時
□陳列棚を見た時
□コンピュータや携帯用電子機器の複雑な視覚パターンを見た時
□家事をしていて悪化する
□午前中はいいが、夕方になると悪化

※子供の頃に車酔いしやすくブランコや回転する遊戯具に乗ると具合が悪くなっていた方がめまいを起こしやすい傾向にあります

③めまいの持続性や状態はどうか

□3ヶ月以上にわたってほとんど毎日起こる
□症状は長時間(時間単位)起こる
□症状の強さに増悪・軽減がある
□一日の内では、時間がたつにつれ増悪する

※瞬間的な増悪だけでは基準は満たされません

④過去に下記の症状になったことがある

□耳の病気(前庭神経炎など)
□神経疾患
□内科的疾患
□うつや不安症を抱えている
□心理的ストレスによるめまい・平衡障害が今までに発症していたことがある

※めまいの種類
●回転性のあるぐるぐるめまい:自分や周囲が動いているような状態になる/障害部位は耳(内耳)・脳
●浮遊感のあるふわふわしためまい:浮いた感じ、クラクラした状態になる/障害部位は心因性・脳
●立ちくらみ:立ち上がった時にフラっとする/貧血、低血圧、脱水の症状がある

発症する頻度の高い病態

・末梢性または中枢性の前庭疾患(PPPD 症例の25~30%)
・前庭片頭痛の発作(15~20%)
・顕著な浮遊感を示すパニック発作または全般性不安(それぞれ15%)
・脳しんとうまたはむち打ち症(10~15%)
・自律神経障害(7%)
・他の不整脈や薬剤の副作用などめまい、浮遊感、不安定感を引き起こしたり平衡機能に影響したりする病態はPPPD の原因とはなりにくい(合計で3%以下)

めまいの診断がつきにくい理由は?

PPPDは、下記の要因から診断がつくにくいとされています。
・世界的めまい学会のバラニー学会で診断基準がまとめられたのが最近の2017年であり、耳鼻咽喉科医も含め医師に広く認知されていないため
・症状が3か月以上持続する機能性めまい疾患であり、3か月以上経過を見る必要がある
 (初回来院からすぐに判断することができない)
・症状と経過のみで診断をつけることが必要になるため
・PPPDは耳・脳・不安症・うつ病とは独立した疾患で、症状以外明らかな異常がない疾患のため
・診断基準は次に記載するA〜Eの5つの項目全てを満たす必要があり診断がつきにくい

 

※引用:ドイツニュースダイジェスト

診断は?

診断基準はA〜Eまであります。

A.浮遊感、不安定感、非回転性めまいのうち1つ以上が3カ月以上にわたってほとんど毎日存在する
1)症状は長い時間(時間単位)持続するが、症状の強さに増悪・軽減がみられることがある
2) 症状は1日中持続的に存在するとは限らない。

B.持続性の症状を引き起こす特異的な誘因はないが、以下の3つの因子で増悪する
1) 立位姿勢
2) 特定の方向や頭位に限らない、能動的あるいは受動的な動き
3) 動いているもの、あるいは複雑な視覚パターンを見たとき

C.この疾患はめまい、浮遊感、不安定感、あるいは急性・発作性・慢性の前庭疾患、他の神経学的または内科的疾患、心理的ストレスによる平衡障害が先行して発症する
1)急性または発作性の病態が先行する場合は、その先行病態が消失するにつれて、症状は基準Aのパターンに定着する
  しかし症状は初めは間欠的に生じ、持続性の経過へと固定していくことがある
  慢性の病態が先行する場合は症状は緩徐に進行し悪化することがある
2) 慢性の病態が先行する場合は、症状は緩徐に進行し悪化することがある

D.症状は顕著な苦痛、あるいは機能障害を引き起こしている

E.症状は、他の疾患や障害ではうまく説明できない

治療方法は?

診断のためには病歴の詳細な聴取に加え、平衡検査、聴力検査、採血、血圧測定、場合によっては、心理検査、耳や脳のCTやMRI検査等の画像検査が必要となり診断には時間がかかります。一般に、既存の抗めまい薬は無効なことが多く、うつや不安症状が合併している方には、抗不安薬(SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を使用する事があります。患者さんに診断や病気について正しく理解していただくことから始まります。

抗不安薬の使用に不安な方は、セロトニンの分泌を促すような食生活・ストレス管理を指導しています。セロトニンを合成するには、タンパク質が必要になりますし、葉酸・ナイアシン・ビタミンB6などのビタミンB群と鉄が必要不可欠になります。そういった栄養素を普段から取り入れることで、薬を使わないで調子が良くなる方もいらっしゃいます。

当院では、患者さんの不快な症状を改善し、回復を早めるために、薬物療法や理学療法を行います。症状がひどい時はまず安静にし、抗めまい薬や抗不安薬、血管拡張剤などのお薬による治療を行います。

その後、症状が落ち着いて来たら、積極的に頭を動かすような理学療法(運動療法)を行っていきます。

良性発作性頭位めまい症を合併しているケースもあります。その場合は、頭位治療(とういちりょう)を行います。医師が患者さんの頭を上下左右にゆっくりと動かすことで、三半規管に溜まった耳石を規管外に出し、所定の位置に戻す効果が期待できます。当院では、寝返り体操を推奨しています。頭位治療は、7~8割という高い確率でめまいが改善する有効な方法です。一度の治療でめまいが治ってしまう場合もありますが、治療の最中はめまいが悪化し、吐き気などが悪化することがあるので注意が必要です。

≪寝返り体操の手順≫
①仰向けに寝る
②首だけを左に移動して10秒静止
③上向きに戻して10秒静止
④首を右に移動して10秒静止
⑤上向きに戻して10秒静止
※一日2回10セット程度(朝晩)、首を痛めないよう無理せず行いましょう

めまいにならないために日常的にできること
*過労を避け、規則正しい生活を心がける
*睡眠を十分にとる
*リラックスする方法を見つけ、ストレス発散に努める
*ストレスがたまらないように楽しいこと、気晴らし、趣味などを見つける
*適度な運動を定期的に行う(散歩・水泳などの有酸素運動)
*幸せホルモンであるセロトニンの分泌が出るような食生活をする
*タバコは吸わないようにする(ニコチンは血管を収縮させ、血流を悪くします)
*気象情報を確認するようにする(低気圧・台風・寒冷前線など病気によっては気圧の変化とめまいが関係があることがあります)

まとめ

めまいには色んな種類があり、突然にめまいがきた場合には、気持ちが動転してしまいます。めまいが起きた時は無理に起き上がらず、発作がおさまるまで安静を保つようにしてください。長期間同じめまいの症状があったり、同じ症状が毎日のように起きる、過去にあっためまいが再発した場合などは、1人で抱え込まず、診療を受けることをおすすめします。

目の前がグルグルまわるめまい(回転性のめまい)は、多くは耳が原因のめまいのため、耳鼻咽喉科を受診してください。過去に良性発作性頭位めまい症や前庭神経炎などの病気にかかった人が、何年も経ったのち、後遺症として発症する場合もあれば、何の病歴もない人が突然発症する場合もあります。いずれにしても発症してから治療開始までの期間が長いほど、治りにくいのが特徴です。良性発作性頭位めまい症が完治していないままの場合、PPPDに移行するケースもあります。

いままで病名がつかず不安だった人の中には、PPPDと診断されただけで症状が回復に向かう人もいるようです。当院の院長は日本めまい平衡医学会が認定しためまい相談医です。めまいに関するお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

記事執筆者

西馬込あくつ耳鼻咽喉科
院長 阿久津 征利

日本耳鼻咽喉科学会 専門医
日本めまい平衡医学会 めまい相談医

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耳の病気

  1. PPPD (持続性知覚性姿勢誘発めまい)

    PPPD (持続性知覚性姿勢誘発めまい)は、原因がはっきりしない長引く慢性的なめまいを指します。身体のどこかに大して特に異常がないが、症状はある状態であることが多く、今までには原因不明と言われていためまいがPPPD (持続性知覚性姿勢誘発めまい)に当てはまると言われています。

  2. 急性中耳炎

    急性中耳炎

    急性中耳炎は急に耳が痛くなる(耳痛)、耳だれが出る(耳漏)、発熱が主な症状です。しかし乳幼児では耳が痛いと言うのを訴えることができず、不機嫌になったり、泣いたりして耳の具合の悪さを表現します。急性中耳炎は、1歳までに30%、2歳までに50%、3歳までに70%の子供がなると言われており、とても身近な病気です。

  3. 滲出性中耳炎

    滲出性中耳炎とは子供・大人ともに薬だけでは治らない事があり手術(鼓膜換気チューブ)になることもある病気です。子供の中耳炎は鼻風邪(鼻水)が原因で起こり、薬・漢方薬・器具を使った治療(オトベント)があります。大人の滲出性中耳炎がある場合は、鼻腔内・上咽頭に炎症や腫瘍がないかを確認する必要があります。

  4. 外耳炎(耳かきしてから耳が痛い)

    外耳炎は“外耳道炎”とも呼ばれ、耳の穴から鼓膜の手前までの外耳道に炎症が起こり、耳のかゆみ・耳の痛みが現れ、さらに外耳道が腫れると、耳が聞こえづらくなる(難聴)、耳が詰まった感じ(閉そく感)を伴います。

  5. メニエール病

    メニエール病は30~50代の女性に多い疾患で、めまいが突然現れ、同時に吐き気・難聴・耳鳴り・耳の閉そく感(詰まる感じ)などの症状も起こります。

  6. 良性発作性頭位めまい症

    良性発作性頭位めまい症は、耳の奥の「内耳(ないじ)」にある三半規管(さんはんきかん)と、耳石器(じせきき)という器官の障害で起こります。頭を大きく動かした時やある一定の頭の向きになった時に、ぐるぐる回転するようなめまいが起きるのが大きな特徴です。

  7. 耳管開放症

    耳管開放症は、軽症例では自然治癒することもありますが、不快症状が続くと、ストレスとなり日常生活に支障を来すことも。耳抜きで一時的に軽快することがあります。症状は、自分の声が響くなど。原因は、ダイエット、妊娠中、ピル内服など。治し方・治療は、漢方薬などの薬物治療が中心となります。

  8. 耳管狭窄症

    耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)とは、鼻の奥と耳をつなぎ、耳の中の圧力を調整する働きを持つ“耳管”と呼ばれる管が、狭くなってしまう病気です。 耳管が塞がってしまうと、耳が詰まった・こもった感じ(閉そく感)になったり、聞こえが悪くなったりする症状が現れます。 また、長引くと難聴が進行する恐れのある滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)を合併する場合もあるので、注意が必要です。

  9. 補聴器相談

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