のどの病気

慢性上咽頭炎(Bスポット療法)

慢性上咽頭炎

鼻水がのどに降りてくる(後鼻漏:こうびろう)、のどの痛み、のどがイガイガする、肩こり、首こり、頭痛、フワフワしためまい、慢性的な疲労感などありませんか?
そんな体調不良が続くからと、病院に行って検査をしても「異常なし」だったり、薬を飲んでも治らなかったりした経験はありませんか?その長引く不調は、もしかしたら「慢性上咽頭炎(まんせいじょういんとうえん)」が関係しているかもしれません。慢性上咽頭炎は、鼻とのどの間にある「上咽頭」が慢性的に炎症することにより、鼻やのどの不調のほか頭痛・肩こり・疲労感など様々な症状が現れます。上咽頭の炎症が病巣となって、腎臓・関節・皮膚の疾患を引き起こすこともあります。

慢性上咽頭炎は「Bスポット治療」または「EAT療法(上咽頭擦過治療)」と呼ばれる、病的な上咽頭粘膜をこする治療を行うことで、様々な不快症状の改善が期待できます。

検査や治療をしても長引く不調が改善しなかった方、冒頭のような症状が続いている方は治療の選択肢の一つとして、当院までお気軽にご相談下さい。


慢性上咽頭炎の症状


慢性上咽頭炎では、次のような症状がみられます。

上咽頭炎による症状


鼻とのどの間の痛み、違和感・乾燥感、声が出しにくい(特にナ行)

後鼻漏の影響?


鼻水がのどに落ちる、鼻とのどの間に痰(たん)がこびりつく、鼻水や痰の詰まり、咳払いが多い、鼻の奥がにおう

上咽頭炎に伴う関連痛


のどの奥やのどの下方(中咽頭・下咽頭)の痛み、首こり・肩こり、頭痛、頭が重く感じる、頬骨・耳の下の痛み

耳の疾患


口(咽頭)と耳は「耳管(じかん)」という管でつながっているため、咽頭側に異常があると、耳が詰まった感じがする耳管狭窄症・耳管開放症の原因となることがあります。
また、上咽頭炎は鼻とのどの中間部分の炎症でありながら、上咽頭に関連しない二次疾患や様々な症状を引き起こす特徴があります。

上咽頭炎による病巣炎症


上咽頭の炎症が「病巣」となり、炎症を抑えようとした物質(サイトカイン)が血流に乗ることで、腎臓や関節・皮膚など離れた場所に影響を及ぼすことがあります。
例)IgA腎症、ネフローゼ症候群、関節炎、胸肋鎖骨過形成症(きょうろくさこつかけいせいしょう)、掌蹠嚢疱症(しょうせきのうほうしょう)、乾癬(かんせん)、慢性湿疹、アトピー性皮膚炎など

自律神経の乱れによる影響


上咽頭は自律神経中枢の近くに位置するため、上咽頭の炎症により自律神経にも影響を及ぼす可能性があると推測されています。
例)全身倦怠感、めまい、睡眠障害(不眠・過眠)、起立性調節障害、記憶力・集中力の低下、過敏性腸症候群、胃もたれ・胃痛などの機能性胃腸症、むずむず脚症候群、慢性疲労症候群、線維筋痛症など

上咽頭とは?


鼻・口・のどは繋がっており、上咽頭とは鼻とのどの間の部分であり、口を開けても見えない場所に位置しています。


(図)上咽頭の場所|メディカルイラスト図鑑


上咽頭は鼻から入った空気の通り道としての役割を持ち、上咽頭の細胞には免疫に関するリンパ球も多数存在して、免疫器官としての役割も担っています。
また、上咽頭の近くにはのどの感覚・運動を司る「舌咽神経(ぜついんしんけい)」や内臓(咽頭・気管・心臓・胃・血管など)にも分布する「迷走神経」などが通っています。
上咽頭に炎症が起こると、これらの神経が刺激されることにより、のどや内臓に症状が現れると考えられます。

慢性上咽頭炎の原因


慢性上咽頭炎の原因は、今のところはっきり分かっていませんが、上咽頭が炎症する要因は様々あります。

細菌やウイルス感染


上咽頭は空気の通り道なので、細菌やウイルスに感染しやすく健康な人でも軽い炎症がある「生理的炎症部分」です。しかし、炎症が悪化し気になる症状が出てきたときは、治療をおすすめします。

体の冷え


上体の冷えは「万病の元」とも呼ばれるように、体温が下がると血管が収縮して血行が悪くなります。血液中にある免疫細胞が細菌やウイルスを撃退しにくくなるので、炎症が悪化しやすくなります。

疲労・ストレス


疲労やストレスがあると、自律神経のバランスが乱れやすく、上咽頭炎が悪化しやすくなります。

乾燥


鼻粘膜は常に分泌物(1日当たり1リットルの分泌量)で潤っていますが、通常は繊毛(せんもう)*1運動により分泌物がベルトコンベアーのようにのどに送られています。
しかし、空気の乾燥により鼻粘膜が乾くと、上咽頭を炎症しやすくなります。また、通常よりも粘り気のある分泌物が増える上、繊毛運動も弱まるので鼻の中に分泌物が溜まりやすくなります。分泌量と排出のバランスが崩れるので、後鼻漏を強く感じることがあります。
*1繊毛運動:繊毛とは粘膜の細胞表面にある細かい毛。繊毛は通常1分間に1センチのスピードで分泌物を鼻の奥(のど)へ送り込む働きをしている。

鼻づまりや後鼻漏を起こす「疾患」


鼻粘膜は加湿の役割を持つため、鼻呼吸では加湿された空気が上咽頭に送られます。
しかし、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など鼻づまりの症状が強い場合には口呼吸となります。口から入った乾燥した空気の一部がそのまま上咽頭に流れ込むことがあり、上咽頭炎につながることがあります。
また、副鼻腔炎などでみられる後鼻漏にも上咽頭を傷つける成分が含まれるため、上咽頭炎を起こしやすくします。

逆流性食道炎


胃酸が上咽頭まで逆流すると、炎症が悪化しやすくなります。

慢性上咽頭炎の検査・診断


慢性上咽頭炎は、上咽頭という目視できない場所に位置している以上、確定診断をするには擦過診(さっかしん)による診断的治療*2が必要となります。
*2診断的治療:治療結果により病気の診断とすること。

問診


問診では自覚症状と発症期間などを伺います。

鼻内視鏡検査


鼻内視鏡(ファイバースコープ)で鼻の奥を観察して、上咽頭の炎症状態を確認します。
急性上咽頭炎では赤みがみられ、慢性上咽頭炎では一見正常に見えますが、うっ血状態(血液が溜まる)やむくみで静脈が見えづらくなったり、後鼻漏が絡んでいたりします。
なお、当院で使用する内視鏡は、鼻から行う胃カメラで使用する内視鏡と比べて直径が半分程度の非常に細いカメラです。挿入時に若干違和感はありますが、痛みは少ないです。

擦過診(患部をこする診察)


「上咽頭の擦過(=Bスポット治療)」により出血や痛みがみられる場合には、慢性上咽頭炎と確定されます。

慢性上咽頭炎の治療(Bスポット治療・上咽頭擦過療法・EAT療法)


慢性上咽頭炎の治療は、塩化亜鉛溶液(0.5%~1%)を染みこませた綿棒を鼻やのどから直接上咽頭に1~2分こすりつけるだけのシンプルな方法です。ただし、上咽頭の炎症程度により痛みが生じることがあります。


(画像引用)Bスポット治療(EAT療法)イメージ|日本病巣疾患研究会
https://jfir.jp/chronic-epipharyngitis/


上咽頭は以前「鼻咽腔(びいんくう)」と呼ばれていたことから、この上咽頭の擦過治療は鼻咽腔(びいんくうい)の頭文字Bを取った「Bスポット治療」や上咽頭擦過療法の英語訳から「EAT療法」と呼ばれています。
もともとBスポット治療は60年以上前から行われていた治療法ですが、医療機器の技術的な限界により効果に対する裏付けが難しく、一度は下火となった経緯があります。
しかし、近年高性能な内視鏡機器が出てきたことで科学的な裏付けが進み、耳鼻咽喉科医の中でも再評価され始めています。
また、IgA腎症の根治治療である「扁摘パルス療法」を考案された堀田修医師*3が上梓した「慢性上咽頭炎」に関する一般向けの本がメディアで取り上げられたことにより、再び注目されています。
*3(参考)堀田修医師:仙台にある堀田修クリニック(https://hoc.ne.jp/eat/)院長。慢性上咽頭炎に関する書籍を多数出版する。認定NPO法人 日本病巣疾患研究会理事長。


(画像引用)Bスポット治療(EAT療法)の仕方|日本病巣疾患研究会
https://jfir.jp/chronic-epipharyngitis/


Bスポット治療は鼻と口のどちらからでも擦過可能ですが、口からの挿入では吐き気が起こる(ウェッとなる)方も多く、鼻からの擦過だけでも十分効果が期待できますので、当院では鼻腔ファイバーを使いながら「鼻からのみ」擦過を行っています。
※口からの擦過も対応可能ですので、ご希望の方はお声がけください。

Bスポット治療による効果が期待できる理由


抗炎症作用
塩化亜鉛には患部を収斂させる(収縮させる)作用があるため、炎症の鎮静化に効果的です。炎症が鎮静化することにより、上咽頭炎が原因の痛みや放散症状の改善が期待できます。

うっ血作用
上咽頭が炎症すると高度なうっ血がみられることがあります。上咽頭をこすることで、リンパの流れや静脈の循環の改善に効果的であると考えられています。

迷走神経の刺激反射
迷走神経を刺激することによって、自律神経系の機能改善が期待できるため、めまい・全身の倦怠感など二次疾患の改善にも有効です。

よくあるご質問



1)塩化亜鉛を用いたBスポット治療は安全ですか??


残念ながら、これまでBスポット治療の安全性を評価する臨床試験は行われていません。しかし、Bスポット治療は1960年代より行われており、治療の第一人者である堀口申作先生(東京医科歯科大学初代耳鼻科教授)や60年に渡り約10万回以上の施行経験のある谷俊治先生(東京学芸大名誉教授)も安全性には問題ないと話されています。
とはいえ、まれにBスポット治療で嗅覚が低下した例も見られることから、嗅覚の神経に近い部分への塩化亜鉛塗布は避けて施行するようしています。

2)Bスポット治療は痛いですか?


Bスポット治療は、収れん作用により患部を刺激して正常化を促す治療なので、上咽頭の炎症が強い程痛みも強く感じます。痛みは消毒薬を傷口に塗ったような「しみる」感覚に近く、治療初期では処置後数分~数時間痛みが残ることがありますが、次第に落ち着いてきます。なお、治療を繰り返して上咽頭の炎症が改善していけば、次第に治療時の痛みも軽減していきます。
また、処置後の副反応として、一時的に鼻水が増える、後鼻漏などの症状が強く出たり、頭が重く感じたりする場合もありますが、通常数時間~遅くとも翌日には治まりますので、心配ありません。

3)Bスポット治療は何歳から受けられますか?妊娠中でも受けられますか?


Bスポット治療では特に年齢制限はありませんが、小学生以下のお子さんについては処置に恐怖心を抱きやすいこともあるため、当院では適応年齢を13歳以上(中学生以上)としています。なお、Bスポット治療は上咽頭への局所処置なので妊娠中・授乳中の方でもお受けいただけます。

4)Bスポット治療の治療期間・通院間隔はどのくらいですか?


各症状の重症度や罹病期間などで異なります。
後鼻漏、頭痛など上咽頭炎に起因する症状の場合には、症状がなくなればBスポット治療の際に多少出血していても、一旦中止することは問題ないと考えられています。
一方、全身の倦怠感、起立性調節障害など「自律神経障害」や腎炎・掌蹠膿疱症など「自己免疫疾患」に起因している場合、Bスポット治療によって症状に改善がみられるときには治療時の出血が見られなくなっても、症状が完全になくなるまで続けると良いでしょう。
また、急性上咽頭炎であれば、1回の治療で症状改善することもありますが、上咽頭の炎症が慢性化した際には治療に時間を要します。慢性上咽頭炎治療の目安としては週1回治療を10回~15回(3か月程度)行うことをおすすめします。なお、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎など鼻疾患を合併している方は、他の鼻疾患の治療も並行して行います。

5)慢性上咽頭炎を予防するにはどうすれば良いですか?


慢性上咽頭炎は一旦症状が改善しても、自律神経の乱れ・ストレスなどによって再発することがあります。慢性上咽頭炎の再発を予防するためには、「のど粘膜の乾燥」と「体の冷え(特に首)」に注意しましょう。
のど粘膜が乾燥すると、細菌・ウイルスが付着やすくなります。こまめな水分補給(お茶よりも水などノンカフェインのものが望ましい)、口呼吸ではなく鼻呼吸を意識することが大切です。また「鼻うがい」も上咽頭の乾燥を防ぐのに有効です。
さらに体を冷やすと自律神経のバランスが乱れ、免疫力が下がることがあります。栄養バランスの取れた食事・適度な運動・十分な睡眠を図り、ストレスフリーな生活を心がけ、免疫力低下を防ぎましょう。

<鼻うがいとは?>
・通常のうがいでは流せない鼻腔内の花粉・ほこりなどを洗浄液で洗い流して、鼻粘膜の乾燥を防ぐ効果が期待できます。
・洗浄液には生理食塩水などを使用すれば、痛みはありません。水やお湯だけで鼻うがいを行うと、鼻がツーンとしますのでご注意ください。
※洗浄液とボトルとのセットも市販されています。


(図)鼻うがい用ボトル例



まとめ


「慢性上咽頭炎」は名前を知らない方も多いためマイナーな病気に思われがちですが、意外にも罹患されている方が多い疾患です。
慢性上咽頭炎は、のどの痛み・のどの違和感・後鼻漏など以外にも肩こり・頭痛・全身倦怠感・めまいなど、一見すると鼻の奥の上咽頭とは関係なさそうに思えるような部位にも影響を及ぼします。

そんな「万病のもと」のような慢性上咽頭炎は投薬治療だけでは改善しにくく、今のところ患部の擦過治療「Bスポット治療」でのみ炎症の改善が期待できます。なお、Bスポット治療は健康保険で治療が受けられます。
治療初期に痛みを伴うことがありますが、少し続けてみて下さい。乗り越えた先には症状の改善があるかもしれません。
Bスポット治療はすべての方の症状が改善される治療ではありませんが、当院では長年のつらい症状でお悩みの方に対し、改善の期待ができる治療法の一つとしてご提案しています。

つらい不調が治らない方・Bスポット治療にご興味をお持ちの方は、当院までお気軽にご相談ください。

記事執筆者

西馬込あくつ耳鼻咽喉科
院長 阿久津 征利

日本耳鼻咽喉科学会 専門医
日本めまい平衡医学会 めまい相談医

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