鼻の症状

鼻づまり(鼻閉)

鼻づまり(鼻閉)

鼻づまり(鼻閉)になると、鼻が通らず、呼吸がとても苦しくなります。
風邪による一時的な鼻づまりは誰にでもありますが、長引く鼻づまりは、集中力の低下や不眠、嗅覚障害など、全身に深刻な症状を引き起こします。

鼻づまりには、風邪以外にも、鼻腔内の炎症や腫瘍、骨や組織の構造によるものなど、さまざまな原因があり、症状にもそれぞれ特徴があります。
治療の方法にも違いがあるため、耳鼻科を受診して正確な診断を受けることが大切です。

鼻づまり症状から考えられるおもな病気とは?

鼻粘膜の炎症によるもの

風邪症候群
体に侵入した風邪のウイルスが増殖し、鼻やのどの粘膜に炎症が起きます。
鼻腔が腫れてしまうため、鼻がつまり、鼻水、せき、くしゃみ、発熱を伴います。

アレルギー性鼻炎
鼻から入ってきた物質を異物と判断し、鼻粘膜が過剰に反応してしまう病気です。
アレルギー反応が起きると、鼻腔内の血管は拡張し、鼻の粘膜が腫れて鼻水や鼻づまり、目のかゆみを引き起こします。
アレルギー性鼻炎の中には、決まった時期にのみ症状が出る「季節性アレルギー鼻炎」と季節に関係なく症状が出る「通年性アレルギー鼻炎」があります。

慢性副鼻腔炎
鼻腔の奥に広がる副鼻腔の粘膜に炎症が起きる副鼻腔炎の中で、症状が3か月以上続くものが慢性副鼻腔炎です。
鼻腔と副鼻腔をつなぐ孔(あな)が腫れて狭くなることや、ねばりのある鼻水が鼻腔内で固まってしまうことから、鼻がつまるようになり、後鼻漏(こうびろう:鼻水がのどに落ちる)や嗅覚障害、鼻茸(はなたけ:鼻ポリープ)を伴う場合もあります。

鼻やのどの構造によるもの

アデノイド肥大
鼻とのどの間にあるリンパ組織「アデノイド(咽頭扁桃)」が極端に大きい状態です。
通常、アデノイドは幼児期~6歳くらいまでの間に大きくなり、その後は徐々に小さくなりますが、成長しても大きいまま縮小しないものをアデノイド肥大といいます。
肥大したアデノイドによって空気の通る道が狭くなり、鼻がつまるほか、口呼吸やいびき、睡眠中に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」を伴うこともあります。

鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)
鼻の穴を左右に分ける壁「鼻中隔(びちゅうかく)」が曲がっている状態です。
多少の曲がりは誰にでもありますが、弯曲が強すぎると、鼻の通り道が狭くなってしまい、左右の鼻が交互につまる、いびき、鼻血、嗅覚障害といった症状が現れます。

鼻につまった異物によるもの

鼻腔異物
鼻に異物(小さいおもちゃ、消しゴム、豆など)がつまっている状態です。
小さなお子さんに多いのが特徴で、気付かずそのまま数日放置してしまうと、異物がある方の鼻腔に炎症が起こり、悪臭のする粘った鼻水や鼻づまり、鼻血、頭痛、発熱などの症状が出ます。

鼻の中の腫瘍(できもの)によるもの

乳頭腫や血管腫などの良性腫瘍
乳頭腫や血管腫は、鼻腔内の粘膜にできる良性の腫瘍です。
腫瘍のできた側のみ、鼻づまりが起き、鼻血や鼻の変形を伴うこともあります。

がん(悪性腫瘍)
まれに、鼻や副鼻腔にがん(悪性腫瘍)ができると、鼻づまりや鼻血を引き起こすことがあります。初期症状が分かりにくいため、発見が遅れがちですが、片側の鼻づまりが長く続き、鼻水に血が混じる時は注意が必要です。

鼻づまり症状に必要な診察・検査

鼻づまりの診断には以下のような検査を行います。

問診、視診

患者さんから症状の特徴や程度、発症時期といった情報を詳しく聞き取ります。
また、鼻の中を見るための「鼻鏡(びきょう)」という器具で、鼻腔内の粘膜の腫れや炎症、腫瘍の有無を確認します。
※直接目で見られない鼻やのどの奥は、必要に応じて内視鏡を使用します。

頭部の画像検査(レントゲン、CT、MRI

鼻腔内の骨や空間の状態を確認する検査です。レントゲンでは、骨の部分は白く、空洞部は黒く写ります。
さらに精密検査が必要な場合には、CTやMRIを行う場合もあります。

鼻汁、血液検査(好酸球検査、特異的IgE抗体検査)

鼻づまりの原因が、アレルギー性鼻炎によるものかを判定する検査です。
アレルギー性鼻炎になると、白血球の一種の「好酸球(こうさんきゅう)」という細胞が増加するため、採取した鼻水や血液の中の好酸球の量を確認することで、アレルギーの有無を確認することができます。
なお、数値が高い場合には、アレルギーの原因物質を特定するための「特異的IgE抗体検査」も合わせて行い、総合的な結果から確定診断を行います。

鼻腔通気度検査

鼻のつまり具合を調べる検査です。センサー付きの機器(マスク)を鼻につけ、片側の鼻ずつ呼吸をすると、検査器のモニターに通気度を表すグラフが表示されます。

鼻づまりを伴う病気のおもな治療法

鼻づまりの緩和には以下のような治療を行います。

局所療法(鼻処置、ネブライザー)

鼻腔内に溜まった鼻水を吸引して鼻内をきれいにした後、ネブライザーという機器で霧状にした薬剤をすみずみに行き渡らせ、鼻づまりを改善します。

(参考)ネブライザー治療の様子


薬物療法(内服薬、点鼻薬)

風邪で鼻粘膜の炎症が起きている場合には、炎症を鎮めるための消炎剤や抗生物質の投与を行います。
アレルギーの場合、鼻づまりに効果的なアレルギー薬(抗ロイコトリエン薬、抗トロンボキサンA2薬)の内服を行い、特に症状がひどい時には強い消炎作用のあるステロイドの点鼻薬も併用します。

また、慢性化した副鼻腔炎の場合、少量のマクロライド系抗生物質を3か月程度服用するマクロライド療法を行うことで、副鼻腔の膿をきれいにし、鼻づまりを改善する効果が期待できます。

異物の除去

内視鏡で鼻の中の異物を確認してから、鉗子(かんし)という特殊な器具を使ってつまった異物を取り除きます。
※異物が複数の磁石やボタン電池の場合は、鼻腔内で化学変化が起き、組織に障害を起こすケースがあるため、除去後もしばらく経過観察が必要です。

(参考)異物除去に使用する鉗子付きファイバー

外科手術

以下のような鼻づまりのケースは、手術による治療が必要になります。

①薬物療法を行っても症状が改善しない、または再発を繰り返す場合
当院では、薬で改善しないアレルギー性鼻炎や慢性的な鼻炎の治療に、レーザー治療を行っています。

(参考)当院で使用しているCO2レーザー機器


②鼻腔やのどの形状に問題がある場合
鼻中隔弯曲症は、曲がった軟骨や骨を取り除き、まっすぐにする手術を行うことで、鼻づまりを改善することができます。
また、日常生活に支障をきたすレベルのアデノイド肥大もアデノイドを切除する手術を検討します。

③鼻茸や腫瘍ができている場合
できてしまった鼻腔内の腫瘍は、自然に小さくなることはないため、手術で摘出します。
また、腫瘍ではないですが、慢性副鼻腔炎による鼻茸も薬剤だけでは完治できないため、切除を検討します。

よくあるご質問

1)鼻づまりになると日常生活にどのような影響がありますか?

鼻づまりが続くと、口呼吸になるため、風邪を引きやすくなりますし、鼻づまりの不快感は、集中力の低下やイライラ、疲れやすさなどの原因になります。
寝付けない、眠りが浅くなるなど、夜間の睡眠にも影響が出るようになると、日中の眠気や頭重感を招き、さらに日常生活はつらくなります。

また、鼻づまりで嗅覚障害になると、食事が楽しめなくなるだけでなく、火事やガス漏れといった身の回りの危険を察知する能力が低下してしまうのも大きな問題です。

2)鼻がつまるとなぜ味が分からなくなるの?

鼻の中の天井部分には、においを感じる「嗅粘膜」というセンサーがあります。
鼻がつまると、においの分子が嗅粘膜に届かなくなり、においを感じられなくなるとともに味覚も鈍くなります。
また口呼吸で口の中が乾燥して味が分かりにくくなる場合や、味を感じる舌のセンサーである「味蕾(みらい)」が乾燥で傷つき、味覚が鈍くなる場合もあります。

3)市販の点鼻薬を使っても良いですか?

市販の点鼻薬には、血管を収縮させる成分が入っています。
鼻粘膜の腫れを引く効果があり、即効性が期待できますが、使っているうちに徐々に慣れて効きが悪くなり、逆に「薬剤性鼻炎」という鼻づまりの原因になることもあるので、市販の点鼻薬はあくまでも一時的に使用するようにしましょう。

4)妊娠してから鼻づまりがつらいですが、治療できますか?

妊娠週数が進むにつれ、妊婦さんの体内の血液量は急激に増加し、鼻粘膜にある毛細血管が拡がるため、鼻粘膜が腫れて鼻がつまりやすくなります。
もともと花粉症持ちの方の場合、症状が悪化するケースも多いです。

治療は、赤ちゃんへの影響を考え、内服薬を使った治療は基本的に行いません。
温かいタオルや入浴で血行を良くするといった対症療法がメインとなりますが、症状がひどい場合、妊娠週数によっては、少量の点鼻薬を使うこともあります。
なお、妊娠性鼻炎であれば、出産後に血液量が通常に戻ると症状も改善されます。

まとめ

鼻は、呼吸やにおいを感じるといった大事な役割を持っています。
私たちの生活の質(QOL)を高めるためにも、なくてはならないもので、慢性的な鼻づまりは身体やメンタルに深刻な影響を及ぼします。

たかが鼻づまりくらいと思って様子を見てしまいがちですが、不快な鼻づまりを我慢しながら生活するのはとてもつらいものですし、放置しているうちに症状が進行してしまい、治療が難しくなってしまうケースもあるので、鼻の通りが悪い時には早めに医師に相談するようにしましょう。

記事執筆者

記事執筆者

馬込駅前あくつ小児科耳鼻咽喉科
院長 岩澤 敬

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医
日本めまい平衡学会 めまい相談医

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西馬込あくつ耳鼻咽喉科
院長 阿久津 征利

日本耳鼻咽喉科学会 専門医
日本めまい平衡医学会 めまい相談医
臨床分子栄養医学研究会 認定医

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