鼻の症状

鼻水がのどにまわる(後鼻漏)

後鼻漏

後鼻漏(こうびろう)とは、鼻水がのどに流れ落ちてくる症状のことです。

鼻水は、風邪のつらい症状の一つというイメージがありますが、本来、身体を守るために必要な生理現象で、健康な人でも毎日1ℓ以上の鼻水が分泌されています。

通常の鼻水は、透明のサラサラした液体で、あくまでも生理的なものなので、私達がのどに落ちてきた鼻水を自覚することはまずありません。
しかし、鼻に何らかの病気(異変)が起こると、鼻水の量が増え、粘り気も出てくるため、のどに痛みや違和感(異物感)を覚えるようになります。

のどに落ちる鼻水が原因で起こる不快な症状は総称して「後鼻漏症候群」と呼ばれ、咳やたん、口臭などの原因になるほか、夜間の咳込みで睡眠を妨げられるような場合もあります。

後鼻漏を伴う病気の種類


後鼻漏は、以下のような鼻やのどの炎症で発症するケースが多く見られます。

風邪症候群

風邪のウイルスに感染し、鼻やのどの粘膜に炎症が起きると、鼻水の量が増え、のどにもたくさんの鼻水が落ちるようになります。
発症時、透明でサラサラしていた鼻水は、時間の経過とともに粘りのある鼻水に変わり、のどの奥ではりついて、たんの絡んだ咳が出るようになります。
風邪を引いた後に、後鼻漏が続く方もいます。そのような場合は慢性上咽頭炎の可能性があります(後述)。


アレルギー性鼻炎

アレルギーの原因物質(アレルゲン)が体内に侵入してアレルギー反応が起こると、鼻粘膜が刺激され、鼻水が大量に分泌されます。水っぱながひっきりなしに出て、のどにも流れ落ちるようになります。
アレルギー性鼻炎の中には、花粉症のようにある一定の期間だけ発症する「季節性アレルギー」と、ダニやハウスダストなど一年中、症状が続く「通年性アレルギー」があります。

副鼻腔炎

鼻腔の奥に広がる「副鼻腔」という広い空間に炎症が起きる病気で、ネバネバした黄色もしくは緑色の濁った鼻水が出るのが特徴です。
急性、慢性どちらの場合でも後鼻漏になる可能性がありますが、進行した慢性副鼻腔炎に多く見られる鼻腔内の鼻茸(はなたけ:鼻ポリープ)で鼻の通りが悪くなり、後鼻漏が起きることもあります。


血管運動性鼻炎

部屋の温度差など環境の変化に鼻粘膜が過敏に反応し、鼻水や鼻づまり、後鼻漏が起こる病気です。
自律神経の乱れが原因で発症すると考えられており、香料やタバコのほか、不眠や精神的なストレスでも症状が出ることがありますが、周りの環境に慣れてくると症状が治まるのが特徴です。

慢性上咽頭炎

上咽頭炎は、鼻とのどの間(鼻の奥の突き当り)にある部分の炎症です。
細菌やウイルス感染、疲労、首の冷え、空気の乾燥などで発症し、上咽頭の痛み、後鼻漏、咳やたん、声が出しにくい、頭痛、肩こり、倦怠感といった幅広い症状を伴います。

鼻の腫瘍

鼻の中に腫瘍ができると、分泌された鼻水が腫瘍にはりつき、後鼻漏が起きることがあります。腫瘍には、乳頭腫や血管腫などの良性腫瘍と、悪性腫瘍(がん)の両方があります。

後鼻漏の原因を調べる検査とは?

後鼻漏の原因を特定するため、以下のような検査を行います。

鼻、のどの視診(内視鏡検査)

医師が、患者さんの症状や発症時期を詳しく聞き取るとともに、鼻やのどの状態を詳しく調べます。外から確認できない場合には、必要に応じて内視鏡を使用します。

レントゲン、CT

鼻腔や副鼻腔内の状態を確認する検査です。
空洞部分は黒く、骨の部分は白く写るので、鼻の中にできた腫瘍の状態や副鼻腔に溜まった膿の有無を確認することができます。
さらに詳しい検査が必要な時には、CT検査が必要になることもあります。当院では、CTがないため、近隣クリニックと連携して診察を行っております。

鼻汁(びじゅう)好酸球・アレルギー検査

アレルギー性鼻炎の疑いがある場合に行う検査です。
アレルギー性鼻炎になると、白血球の成分の一つである「好酸球(こうさんきゅう)」という物質の数が増えるため、鼻水や血液に含まれる好酸球数を確認し、アレルギー性の有無を確認します。
好酸球が増えている場合、アレルゲンとなる物質を調べるための採血(特異的IgE抗体検査)を行い、何に対してアレルギーがあるかを調べます。

血液検査

後鼻漏がある方は、それ以外の身体の不調を訴える方も多いです。
全身倦怠感・肩こり・頭痛・冷え性・指先の荒れ・便秘や下痢などの症状がある方は、必要に応じ血液検査をすることで、身体の不調がないかの確認を行います。人間ドックや内科での採血がありましたら、そちらも併せてお持ちください。

後鼻漏のおもな治療法

後鼻漏を改善するポイントは、鼻水の量と粘り気を減らすことと、鼻水をスムーズに流す機能を回復させることです。
後鼻漏の原因となる病気の症状に応じて以下のような治療を行います。

薬(内服、点鼻)による治療

鼻腔や副鼻腔の炎症が原因の場合、炎症を鎮めるため、以下のような薬を服用します。

  • 風邪症候群、上咽頭炎……消炎剤、去痰剤、粘液調整剤、抗生物質
  • アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎……抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド点鼻薬
  • 副鼻腔炎……粘液調整剤、マクロライド系抗生物質(通常の使用量の半量を3か月程度服用することで、鼻の中につまった膿をきれいにする効果があります)

鼻処置、ネブライザー

鼻腔や副鼻腔内に溜まった鼻水を吸引してきれいにし、霧状にした抗生物質やステロイド薬を吸入して鼻の通りを良くする治療です。

(参考)ネブライザー治療の様子

 

Bスポット療法

上咽頭に塩化亜鉛などの消炎剤を直接塗布する治療法で、慢性上咽頭炎の改善に効果があります。
鼻または口の中から、綿棒で塩化亜鉛を塗りつけることで、上咽頭の痛みや後鼻漏、頭痛などを改善することが可能です。一度の治療で良くなる場合もありますが、慢性化してしまった上咽頭炎の場合、治療期間も長くなります。

外科手術

薬による治療だけで改善が見られない場合には、外科的な手術を検討します。
当院では、アレルギー性鼻炎の治療に、レーザーを取り入れています。

(参考)当院で使用しているCO2レーザー治療器

また、鼻の中にできた腫瘍は、薬では治らないため、手術で腫瘍自体を摘出します。
大きな鼻茸や複数の鼻茸がある慢性副鼻腔炎の場合も、薬物療法だけでは完治が難しいため、切除手術を行います。

よくあるご質問

1)後鼻漏は完治できますか?また、治療期間はどれくらいですか?

原因となる病気や、後鼻漏が発症してからの期間によって異なります。
風邪のように発症して間もない後鼻漏であれば、適切な治療で多くが完治します。
しかし、発症から時間が経ってしまった慢性副鼻腔炎などの場合、治療には少なくても3~6か月程度、慢性上咽頭炎では2か月以上の時間がかかるため、根気強く治療に取り組む必要があります。

2)生活習慣で気を付けることはありますか?

乾燥を防ぐため、マスクや加湿器で鼻やのどの保湿をしましょう。
ウイルスや細菌感染の予防には、免疫力を高めておくことが大切です。
日頃からバランスの良い食事と適度な運動を心がけ、十分な睡眠をとりましょう。
また、口呼吸はのどの乾燥につながるため、鼻で呼吸を行うことも大切です。

3)後鼻漏に鼻うがいは効果がありますか?

まず、原因となる病気の治療が一番ですが、慢性化して治りにくい後鼻漏の場合、生理食塩水を使った鼻うがいも一定の効果があります。
最近では、ドラッグストアでも簡単に鼻洗浄液が手に入るようになりましたが、使用の際は、鼻やのどの粘膜を傷めてしまわないよう、正しく行うようにしましょう。

4)後鼻漏症状がありますが、検査では異常が見つかりませんでした……。

患者さん自身が、「鼻とのどの奥の引っかかり」を感じている場合でも、実際の検査で後鼻漏の症状が認められないケースがあります。こういった場合、慢性上咽頭炎の可能性が高いです。慢性上咽頭炎は、内視鏡検査を行っても、判断ができない場合があります。そういった場合、直接薬液を上咽頭に塗ることで慢性上咽頭炎を確認します。後鼻漏の症状がある場合は、慢性上咽頭炎の治療を行っているクリニックがオススメです。

また、胃食道逆流症で胃酸が逆流し、上咽頭に上がってきた時に、後鼻漏のようなのどの奥の引っかかりを感じることがあります。
そのほか、加齢による鼻粘膜の乾燥やストレス、自律神経の乱れも後鼻漏感の原因になることがあります。

症状改善のためには、まずこれらの原因となっている病気を突き止めることが重要で、それぞれの病気に合った適切な治療を行うことが大切です。

まとめ

後鼻漏は、一般にはまだあまり知られていない症状ですが、何年も悩んでいる方もたくさんいらっしゃいます。

後鼻漏は、のどに起きる異常と思ってしまいがちですが、鼻の病気に関連して起きることが多いため、のどだけでなく、鼻の治療もしっかりと行っていく必要があります。

まずは、後鼻漏の原因となっている病気を見つけることが最優先となります。
つらい後鼻漏症状でお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。

記事執筆者

記事執筆者

馬込駅前あくつ小児科耳鼻咽喉科
院長 岩澤 敬

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医
日本めまい平衡学会 めまい相談医

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西馬込あくつ耳鼻咽喉科
院長 阿久津 征利

日本耳鼻咽喉科学会 専門医
日本めまい平衡医学会 めまい相談医
臨床分子栄養医学研究会 認定医

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