しいたけと昆布で作る精進だし

当院では栄養士の大塚さんにご協力いただき毎週栄養たっぷりのレシピをご紹介します✨
過去のレシピに関してはこちらよりご覧ください。
第11回目は第10回に引き続き「昆布としいたけを使っただし」についてです。

昆布としいたけでとっただしは昔から精進だしとして料理などで用いられてきました。

精進だしとは、植物性の材料だけを使って取っただしです。そのため野菜類の贖罪によく合い、素材の味を活かした調理ができます。かつおなどの魚類を使っただしとの違いは、うまみ成分や香りです。

かつおだしは日本料理に幅広く使用されており、旨み成分としては、かつおに含まれているイノシン酸やグルタミン酸が旨みを出し、どの食材とも相性のいい優しいコクと風味が特徴です。それに対して精進だしは、さっぱりとした薄味で野菜の甘みを感じる味わいがあります。動物性が含まれていないため、精進料理に活用されます。旨み成分にはかんぴょうや干ししいたけの成分であるグルタミン酸やグアニル酸が旨みを出すほか原料に使った植物の甘味成分などがだしの旨みとなります。素材の味を活かす控えめなコクと風味が特徴です。

今回は、『しいたけ』にスポットをあて、干ししいたけの種類、干ししいたけの選び方、干ししいたけと生しいたけの違いと栄養素、そのだし汁を使った簡単においしい味噌味けんちんのご紹介をします。

昆布と干し椎茸の水だし

だしの材料


昆布        5cm(3g)
干ししいたけ    15g(3個)
水         600ml

だしの作り方

容器に昆布と干し椎茸を入れ水を注ぎ冷蔵庫に一晩(6時間以上)おく。


※冷蔵庫で約1週間保存が可能です

干ししいたけは水とお湯どちらでも戻す事は可能ですが、干し椎茸を水につけると急速に給水を始めます。この温度が高くなるほど給水量が少なります。水からじっくり戻す方が干ししいたけが大きく膨らみ、肉質が柔らかくなります。

干ししいたけの選び方・種類

■選び方
軸が太くて短く、かさの色が明るく表面がよく乾燥した色つやの良いもの、かさの裏側が明るいものがおすすめです。干し椎茸は値段の幅が大きく、姿・形 が整ったものほど高価になるので、刻んで使うなど用途が決まっている場合は、形が不揃いなものなどを選ぶとお得に購入できます。

よくスーパーに売っているのは国産と中国産がありますが、香りや味、歯ごたえが異なります。国産の方が香りや味が優れて歯ごたえがあります。中国産は全体的に重量が軽く、国産のものと比べると水に戻してからの大きさは小さく歯ごたえなど物足りないことが多いです。

■種類
【どんこ】
晩秋から初夏にかけて収穫されます。ふっくらとしていて厚みがあり、かさの開きが少ない状態で収穫した椎茸のことをいいます。歯ごたえがあり、色も味も強い出汁がとれます。かさに白い亀裂が入り、肉厚で形の整ったものは「天白どんこ」と呼ばれます。寒さと乾燥により、かさの表面が花のようにひび割れた「花どんこ」は最高級品とされています。鍋物、天ぷらなどのお料理に向いています。

【香信】
春と秋の温度も湿度も高い時期に、短時間で成長したものです。かさが7分開き以上になっていて、どんこに比べると厚みはなく、大きさがあって平た い形になっています。色が薄めで上品な味の出汁が取れるので、薄味の料理に向いています。ちらし寿司や炒め物などに混ぜて使うことが多いです。

【こうこ】
どんこと香信の中間のようなものです。どんこに近い厚みと香信に近い大きさがあるのが特徴です。幅広い料理に使えます。大相撲で優勝力士に送られる干ししいたけです。

干ししいたけと生しいたけの違い

■旨み
以前お伝えした、日本で発見された旨味成分。椎茸の旨味の元は「グアニル酸」です。「グアニル酸」は「グルタミン酸」「イノシン酸」と合わせて 3 大うまみ成分の 1 つです。グルタミン酸が昆布やトマトなどイノシン酸がカツオや煮干しなど複数の食材に含まれています。

実はグアニル酸は、ほぼ干ししいたけにしか含まれておらず、しかも椎茸を乾燥することでグアニル酸の含有量は増えます。グアニル酸の含有量は生しいたけが 100 グラムあたり 70 ミリグラムに対して、干し椎茸は 150 ミリグラムです。倍以上も旨みが変わります。

また、干ししいたけをお湯で戻したものと水で戻したものとではグアニル酸の量は300 倍以上も違います。

■栄養価が違います
生しいたけと干ししいたけを比べてみると、かなり栄養成分に違いがあります。

生しいたけの栄養素(100gあたり)
食物繊維:4.2g
カリウム:280mg
ビタミンD:0.4μg
葉酸:44 μg

干ししいたけに含まれる栄養素(100g当たり)
食物繊維:41.0g
カリウム:2100 mg
ビタミンD:12.7μg
葉酸:240 μg

乾燥するだけでもこんなに栄養素が増えます。

【食物繊維】
食物繊維の含有量は約 40%で生シイタケの約10倍です。整腸作用があり便通を良くするので肌荒れを防ぎ、ダイエットや肥満防止にも効果的です。

【ビタミンD】
カルシウムの吸収率を高め、骨を丈夫にします。また、脳神経の発育にも良いと言われています。お子さんがイライラしがちな時、やる気を起こさせたい時にも食べさせてください。

干ししいたけは生シイタケの 30 倍のビタミンが含まれています。日光に当たるためビタミンDが増えているのですが、生の椎茸を食べる前に太陽に1〜2時間当てるだけでビタミンDが 10 倍になるとも言われています。

【レンチナン】
しいたけ独特の香 りの成分。免疫力を高め、ウイルス性の病気に強い抵抗力を高めます。血栓症の予防に効果があります。

【エリタデニン】
血圧抑制効果、血管の詰まりやコレステロールの増加を防ぐ効果があります。

昆布と干し椎茸の水出しを使ったレシピ 〜味噌味のけんちん汁〜

先ほどご紹介しただしを使った「味噌味のけんちん汁」の作り方をご紹介します!野菜もたくさん入っているので、おかずが足りないという時の1品にもなります。

大塚さんが勤める保育園でも椎茸やキノコが嫌いなお子さんいらっしゃるそうですが、味噌汁や汁物にすると食べるお子さんも多くいらっしゃるとのことです。どうしても食べられない場合は、小さめに切ってあげるとより食べやすくなります。

■栄養士大塚さんからのコメント
だしと野菜の味が汁にじわっと出ていて優しい味です。2人前と書いていますが野菜の量も多いので、お腹いっぱいになります。小さく切って野菜を柔らかく煮ると離乳食にも使えます。

■材料

しいたけと昆布だし 600ml
ごぼう   1/4 本
にんじん  5cm
大根 3cm
しいたけ 2 枚
木綿豆腐 1/2 丁
あぶらあげ 1/2 枚
ねぎ 1/2 本
味噌 大さじ2

■作り方
1、野菜と豆腐を切っていく
にんじん:5〜6mm幅の半月切りにする

ごぼう:5〜6mm幅の半月切りにする
※ごぼうは皮を剥かずにたわしでこすり洗いする

大根:7〜8mmほどのいちょう切りにする

油揚げ:縦に切り、1cm幅に切る

しいたけ;7mmほどの薄切りにする
※石づきも薄切りにして入れる

木綿豆腐は1cm角切りにする

ネギは薄切りにする

2、鍋にごま油を熱し、ネギと油揚げ以外の野菜を加え炒める

3、だし汁を入れ、蓋をして中火で 10 分ほど煮る
※だし汁が少ない場合は水を分量に合わせて加えてください

4、大根が柔らかくなってきたら油揚げネギを加える

5、味噌を加える

完成

まとめ

精進料理と聞くと「難しいのでは?」と思ってしまいがちですが、実は簡単にだしが取れ、精進だしの繊細な味を利用して、素材の味を活かし煮物やお吸い物などアレンジのメニューはたくさんあります。

かつおだしのようにコクや風味が強いわけではありませんが、いくつかの植物を組み合わせて取っただしは、料理に使う食材の味をそのまま残しながらもコクと旨みを繊細に出すことができるだしです。上手にメニューに加えて美味しく精進だしのお料理を楽しんでみてください。

記事執筆者

大塚 智美

・現役保育園栄養士
・時短料理研究家

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