子供の病気

伝染性紅斑(リンゴ病)

リンゴ病(伝染性紅斑)

概要

伝染性紅斑は、「リンゴ病」とも呼ばれており、ヒトパルボウイルスB19(B19V)というウイルスによって引き起こされる、小児によく見られる発疹性の病気です。5〜9歳の発生が最も多く、次に0〜4歳に多く見られます。

パルボウイルスという名前は、ラテン語で「小さい」を意味する「parvus」に由来します。 また、B19という番号は、ウイルスが初めて発見されたときの検体番号に由来します。

1975年にイギリスで発見されたB19Vは、1983年に伝染性紅斑の原因であることが明らかになりました。 日本国内では、1976年から1977年にかけて全国的な流行がみられた後、5年ごとの周期的な流行が観察されています。

症状

伝染性紅斑の一番特徴的な症状は、両方の頬に出る赤みです。この赤みは、まるで頬がりんごのように赤くなることから「リンゴ病」と呼ばれています。

頬の赤みと同時か、少し遅れて、腕に直径数ミリから2センチほどの赤い発疹が出ることがあります。その後、足にも広がり、四肢の発疹はつながり合い、2~3日で中心から薄くなり、網目状やレース状の模様に変化します。胴体にも発疹が広がることがありますが、目立たないことが多く、網目状になることはあまりありません。発疹は通常、7日から10日ほどで消えます。

約20%の患者さんでは、一度消えた発疹が、日光を浴びたり肌に刺激が加わったりすることで再び現れることがあります。これは再感染ではなく、以前かかった伝染性紅斑の症状が一時的に戻っているだけなので、心配する必要はありません。一度かかると体は終生免疫を持つため、再感染することはありません。

また、年長のお子さんや大人の場合、伝染性紅斑の発症時に手足の関節が痛むことがあります。時には、発疹が見られず関節痛のみを訴えるケースもあります。

B19ウイルスは赤血球の前駆細胞に感染するため、特定の血液の病気に関係することもあります。例えば、鎌状赤血球症や遺伝性球状赤血球症などの先天性の貧血がある方では、B19ウイルスに感染すると赤血球を作る働きが抑えられ、「無形性発作」と呼ばれる重い貧血を引き起こすことがあります。この無形性発作は、発熱や頭痛、お腹の痛み、吐き気、全身のだるさなどの症状から始まり、その後に顔の青白さや動悸、息切れなどが見られることが多いです。発見時にはヘモグロビン値が急激に低下することもあり、貧血に加えて白血球や血小板の数も減少することがあります。

伝染性紅斑以外にも、B19V感染によって様々な症状が現れることがあります。

  • 紫斑
    紅斑とは異なります。この症状は、1990年にスイスの皮膚科医であるHarms先生によって報告され、発熱と口内炎を伴い、手や足に紫斑が出る「手袋と靴下症候群(papular-purpuric gloves and socks syndrome, PPGSS)」として知られています。PPGSSはB19ウイルスの感染によって引き起こされることが多いですが、必ずしもB19ウイルスだけが原因ではないこともあります。一方で、B19ウイルス感染が関係する場合のみPPGSSと呼ぶべきだという見解もあります。
  • 関節炎・関節症
    年長のお子さんや大人では関節炎や関節症が見られることもあります。これにより、関節が腫れたり痛んだりすることがあり、日常生活に影響が出ることもあります。
  • 急性肝炎
  • 脳炎・脳症

原因

伝染性紅斑の原因は、ヒトパルボウイルスB19(B19V)というウイルスです。B19ウイルスは、骨髄の赤血球の前駆細胞に感染して増殖します。このウイルスは、P式血液型のP抗原をレセプターとして使うため、P抗原を持たない一部の人々は生涯にわたってB19ウイルスに感染しないと考えられています。

治療

伝染性紅斑自体は、皮膚にかゆみを生じることがありますが、健康なお子さんの場合、症状は軽く、通常は自然に経過を見守るだけで十分です。かゆみが強い場合は、対症療法として抗ヒスタミン薬が処方されることもあります。また、B19ウイルスに対する特別な抗ウイルス薬は現在のところ開発されていないため、基本的には症状に応じたケアが行われます。

予防

伝染性紅斑は、飛沫感染または接触感染によって広がります。特に感染力が強いのは、発疹が出る時期ではなく、その約1週間前の「ウイルス血症」の時期です。この時期には血液中に非常に多くのウイルス(B19ウイルス)が含まれており、唾液や口の中からも大量にウイルスが排出されています。発疹が出ている時期にもある程度ウイルスが血液中に存在しますが、この時期には感染力がかなり低下しています。

伝染性紅斑を予防するためには、以下の点に注意することが重要です。

  • 手洗いとうがいの励行
    感染経路を遮断するために、手洗いとうがいをこまめに行いましょう。
  • タオルの共用を避ける
    接触感染を防ぐために、タオルは共有せず、各自で用意しましょう。
  • 人混みを避ける
    流行期には、特に人混みを避けるようにしましょう。

学校保健の観点から見ると、伝染性紅斑を発症した園児や学童を出席停止にすることは効果がありません。感染力が最も強いのは発疹が出る前の「ウイルス血症」の時期であり、これは紅斑が現れる1週間以上前に当たります。この時期に感染が広がりやすいのですが、紅斑が出る前にB19ウイルスに感染しているかどうかを知ることは難しいため、発疹が出てからの隔離にはあまり意味がないのです。

まとめ

伝染性紅斑は、B19ウイルスというウイルスによって引き起こされる、小児によく見られる病気です。典型的な症状は、両頬が赤くなる発疹(リンゴ病)ですが、発熱、倦怠感、関節痛などがみられることもあります。

通常は自然に治りますが、まれに重症化することもあります。特に、妊婦や免疫が低下している方は重症化するリスクが高いため、注意が必要です。感染を防ぐためには、手洗いやうがいをしっかり行うことが大切です。

馬込駅前あくつ小児科耳鼻咽喉科では小児科を診察しています。

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よくある質問

  • リンゴ病になって、幼稚園や保育園にはいつから行けますか?

顔に赤い発疹が出る前が一番感染力が強い状況です。そのため、顔に発疹がでている時は、感染性が低いため、本人が元気であれば、普段通りに登園が可能です。

  • 大人がリンゴ病にかかることがありますか?

大人の場合のリンゴ病は、発熱・鼻汁・倦怠感などの風邪症状の後、1週間ほど経過をすると、皮膚の症状が出ることが特徴です。子供と違い、顔に発疹が出ることは少なく、手足に出ることがほとんどです。

ママが妊娠中の場合、リンゴ病の原因となるウイルスは、胎盤を通過し、胎児に影響を及ぼすことがあり、流産の原因となります。子供がりんご病にかかった妊娠中のママは、自宅でもしっかりと感染対策のケアをし、担当の産婦人科の先生に相談をしてください。

参考文献

要藤裕孝. (2020). 伝染性紅斑. 小児内科, 52(増刊号).

記事執筆者

記事執筆者

馬込駅前あくつ小児科耳鼻咽喉科
院長 岩澤 敬

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医
日本めまい平衡学会 めまい相談医

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馬込駅前院 予約

西馬込あくつ耳鼻咽喉科
院長 阿久津 征利

日本耳鼻咽喉科学会 専門医
日本めまい平衡医学会 めまい相談医
臨床分子栄養医学研究会 認定医

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子供の病気

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  2. 予防接種

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  3. 夜尿症(おねしょ)

    夜尿症とは、5〜6歳を過ぎてもおねしょが続くことです。子どもは寝ている間に膀胱をうまくコントロールできないことや、体がまだ完全に成長していないことがあります。多くの子どもは、成長とともに自然に治りますが、もし心配なら、生活習慣を見直すことや、必要に応じてお医者さんに相談することも大切です。

  4. 溶連菌感染症

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  6. 子どもの嘔吐

    お子さんが嘔吐した時、まずは落ち着いてあげることが大切です。無理に水分を摂らせるのは避け、少しずつ与えましょう。元気であればしばらく様子を見て大丈夫ですが、ぐったりしていたり、発熱や激しい腹痛がある場合は、すぐに医師にご相談ください。

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  8. 赤ちゃんの夜泣き

    赤ちゃんの夜泣きは、特別な原因がないのに毎晩泣く現象で、病気ではありません。生後3~6か月から始まり、1歳半まで続くことが多いですが、個人差があります。赤ちゃんの睡眠サイクルが未発達なことが原因とされています。親が過度に心配することはありませんが、いつもと違う泣き方の場合は医師にご相談ください。

  9. 乳幼児の便秘

    便秘は「長い間、便が出ない・出にくい状態」のことです。お子さんの便秘は珍しくなく、10人に1人以上が悩んでいると言われています。便秘を放置すると、排便時に痛みを感じ、便意が感じにくくなり、悪化してしまうこともあります。特にお子さんの場合、便秘がイライラや多動など、精神面にも影響を与えることがあります。早めに対処することが大切です。気になることがあれば、一度ご相談ください。

  10. 乳幼児健診

    赤ちゃんや子どもたちは日々成長しています。乳幼児健診は、発育や健康を確認するために行われる定期的な健診です。大田区では、4か月、1歳6か月、3歳児健診は集団で、6〜7か月、9〜10か月健診は個別に行われます。いずれも公費で受けられます。健診で、成長の確認や育児の悩みを相談できますので、お気軽にご相談ください。

  11. 突発性発疹

    突発性発疹は0歳〜2歳の赤ちゃんに多いウイルス感染症で、主に38℃以上の高熱と全身に発疹が現れます。特別な治療は必要なく、安静にして水分補給を心がけましょう。ただし、けいれんや異常な症状が見られた場合はすぐに病院を受診してください。

  12. 細菌性胃腸炎

    食後に下痢や腹痛が起きた場合、細菌性胃腸炎が原因かもしれません。主に夏に多く見られ、カンピロバクターやサルモネラ菌などの細菌が胃腸に感染し、下痢や発熱を引き起こします。特に乳幼児や高齢者は重症化しやすいので、症状が強い場合は早めに受診しましょう。

  13. ヘルパンギーナ

    主に5歳以下の子供がかかりやすい夏風邪の一種です。高熱や喉の痛み、口内炎が特徴で、1週間程度で回復しますが、脱水症状に注意が必要です。大人も感染することがあり、感染予防には手洗いとマスク着用が大切です。

  14. ウイルス性胃腸炎

    お子さんが急に嘔吐や下痢をした場合、ウイルス性胃腸炎の可能性があります。この病気は主に秋から春にかけて多く、ウイルスが胃腸を感染させることで症状が出ます。脱水を避けるため、十分な水分補給が大切です。症状がひどくなる前に、早めに医師に相談しましょう。

  15. 手足口病

    手足口病は、主に5歳以下の子どもに多い夏風邪の一種で、手足や口に痛みを伴う発疹が出ます。軽い熱があり、通常は1週間で回復します。脱水に注意し、症状が重い場合は医師に相談しましょう。大人も感染することがあります。

  16. 咽頭結膜熱(プール熱)

    主に5歳以下の子どもに多い夏風邪の一種で、手足や口に痛みを伴う発疹が出ます。軽い熱があり、通常は1週間で回復します。脱水に注意し、症状が重い場合は医師に相談しましょう。大人も感染することがあります。

  17. 伝染性紅斑(リンゴ病)

    伝染性紅斑は小児によく見られる病気です。典型的な症状は、両頬が赤くなる発疹(リンゴ病)ですが、発熱、倦怠感、関節痛などがみられることもあります。通常は自然に治りますが、まれに重症化することもあります。感染を防ぐためには、手洗いやうがいをしっかり行うことが大切です。