子供の病気

手足口病

手足口病

手足口病(てあしくちびょう)は「夏風邪」のひとつで、特に5歳くらいまでの保育園や幼稚園に通うお子さんたちの間で毎年流行する「ウイルス感染症」です。
ただし、原因となるウイルスの型が10種類以上あるため、大人でも感染することがあります。

手足口病の主な症状は、手・足・口の中の痛みを伴う、水ぶくれのような発疹と微熱(37℃~38℃)です。口の中の痛みによって、食事や水分が摂りにくくなるので脱水に注意が必要です。

手足口病では特に治療の必要はなく、1週間ほどで自然に改善していきますので、安静にして十分な睡眠や水分補給を行ってください。
まれに急性髄膜炎や急性脳症などの合併症を起こすことがあるので、ぐったりしている、機嫌が特に悪い、高熱が何日も続くなど、いつもと違う様子がみられる時はすぐに医療機関を受診しましょう。

手足口病とは?

手足口病は「ウイルス感染症」のひとつで、感染者の約80%を5歳くらいまでの小さいお子さんが占めます。「3大夏風邪*1」のひとつとして、暑さで食欲がなくなったり、睡眠が十分にとれなくなったりして体力が落ちやすい夏に流行します。
*1夏風邪:梅雨~夏に流行するウイルス感染症の総称。特に「手足口病・ヘルパンギーナ・プール熱」の3つを「3大夏風邪」と呼ぶ。

手足口病の原因

手足口病の原因は、主にA群コクサッキーウイルス(CA6、CA16)やエンテロウイルス71(EV71)などの「エンテロウイルス」で、ウイルスの型は10種類以上あります。
中でもエンテロウイルス71による手足口病では、髄膜炎を合併する確率が他のウイルスより高いとされています。

通常、手足口病は回復するとそのウイルスに対して終生免疫が獲得できるため、2度と感染しません。
しかし、手足口病の原因ウイルスである「エンテロウイルス」には多数のウイルスの型があるため、何度も感染することがあります。

手足口病の主な症状

手足口病の典型的な症状は、次の通りです。
ポイントは、「手足口の発疹と微熱」です。

  • 発熱(37℃~38℃の微熱)
    →感染者の約1/3にみられ、1~3日程度。高熱はほとんどでない。
  • 手(手のひら・指の間など)・足(足の裏・足の甲・指の間・膝など)
  • 口の中に米粒大の発疹(水ぶくれ・赤いブツブツ)
    →発疹にかゆみはないが、チクチクした痛みを感じることがある。5~7日程度。
  • 口内炎
    →口の中(舌、頬の裏、唇の裏など)にできた水ぶくれがつぶれた後に現れることがある。痛みによって食事・飲み物を受け付けなくなることがあるので、脱水症状に要注意。
(画像)発疹例(口の周り)
(画像)発疹例(手)
(画像)発疹例(足)

発疹が出る部位は人それぞれで、手足口全てに出る人、一部分しか出ない人など、症状の現れ方には個人差があります。
また、近年、コクサッキ―ウイルスA6が原因の場合、手足口病が治ってから1~2か月後に手足の爪がはがれるという症状も報告されています。
※一時的なもので、すぐに新しい爪が生えてくるので心配ありません。

基本的に病気の経過は軽いのですが、まれに髄膜炎などの合併症が起こるので、高熱が続く、元気がないなど「普段と違う様子」がみられたら、すみやかにご受診ください。

手足口病の潜伏期間と感染経路

  • 潜伏期間:約2~5日 
  • 感染力:強い 
  • 感染経路
    飛沫感染……感染者から飛んだ唾液や分泌物を鼻・口などから吸いこみ感染
    接触感染……菌の付いたタオル・食器・ドアノブ・手すりなどを触る、菌の付いた食品から感染
    経口感染……便に含まれるウイルスが口に入ることで感染
    ※原因ウイルスは、咳・鼻水から約1~2週間、便からは約3週間~5週間排出される。
  • 感染しやすい時期:一年を通して感染するが、ピークは6月~8月。秋~冬にやや流行することがある。
  • 感染しやすい年齢:5歳以下 ※半数は2歳以下だが、たまに大人の感染もある

手足口病の合併症

手足口病は、基本的に感染しても問題なく自然に回復していく感染症です。
しかし、エンテロウイルス71が原因となる場合、次のような中枢神経系合併症がみられることがあります。

無菌性髄膜炎

脳や脊髄を包んでいる膜に炎症が起こる病気です。
主な症状は頭痛や嘔吐、発熱で、1~2日続きます。
特別な治療法はなく、頭痛や発熱には解熱鎮痛剤、嘔吐によって水分が摂れていなければ点滴による水分補給などの対症療法を行います。
怖そうな名前ですが、ほとんどは後遺症もなく回復していきます。

脳症

ごく稀に起こる、手足口病の合併症です。
主な症状は、けいれん・意識障害(意識がもうろうとする・反応がないなど)・嘔吐です。
いつもと異なる様子がみられるときには、小児救急外来を受診するとよいでしょう。

そのほか、小脳失調症、AFP(急性弛緩性麻痺)、脳炎など重篤な合併症を起こすことがあります。

手足口病の検査・診断
手足口病は、症状(微熱や手足口の発疹)と月齢・年齢、病気の経過などの特徴から、総合的に診断します。

手足口病の治療

手足口病には、特効薬はありません。発熱や発疹・口内炎などの症状が出てから、1週間程度で自然に回復していくため、経過観察となります。
口内炎など発疹の痛みに鎮痛薬を処方することがあります。
また、痛みを感じるときには、刺激を避けるようにしましょう。

基本的には軽い症状で済みますが、稀に合併症が起こることがあるので、経過観察はしっかりと行ってください。

よくあるご質問

手足口病に感染したら、保育園・幼稚園・学校は出席停止になる?

手足口病は、インフルエンザとは異なり、法律上出席停止となる病気として定められていませんので、感染=出席停止とはなりません。
そもそも手足口病は、一般的には軽症疾患として感染上の問題が少ない上、原因ウイルスは長期間排泄されることから、隔離措置を行っても流行阻止効果が低いと考えられています。
とはいえ、発熱中はお休みしておうちで安静に過ごしましょう。

なお、登園(登校)は解熱して1日経過後、口の中の水疱(口内炎)の影響がなくなり、普段通り食事が取れるなど、全身状態が良くなってからにしましょう。
(参考)学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説(P.26)|日本小児科学会
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/yobo_kansensho_20200522.pdf

大人が手足口病になった場合、子どもと同じような症状ですか?

お子さんがかかる病気というイメージが強い「手足口病」ですが、実はお子さんから大人にうつる可能性もあります。また、大人が感染すると、子どもより症状が重く出やすい特徴があります。
発疹の痛みが強く出るため、手のひらや唇の痛みで生活に支障を来したり、足の裏が痛くて歩けないほどになったりすることがあります。
また、インフルエンザのときのような全身の倦怠感・悪寒・筋肉痛、関節痛などの症状が現れる場合もあります。
なお、身近で手足口病にかかったお子さんがいなくても、公共交通機関を利用した際にお子さんと接触するケースは考えられ、体力が落ちていれば感染する可能性は十分あります。

手足口病を予防する方法はありますか?

現在、有効なワクチンや発症予防薬はありません。
しかし、お母さんが妊娠中に上の子が手足口病になることもあり、そのようなケースでは徹底した感染対策が必要です。

衛生観念がまだ発達していない乳幼児さんの集団生活の場では、完全に感染を防ぐことは正直難しいです。
しかし、基本的に発症後の経過が悪くなく、ほとんどの人が子どものうちにかかって免疫を付けてきた感染症のひとつなので、予防する必要もないと考えられています。
とはいえ、ウイルス感染症対策として、日頃から「手洗い・うがいの徹底、咳エチケット」などの感染対策は行うようにしましょう。
特に、トイレ後・おむつ替え後はしっかり石けんで洗って、よく水で流しましょう。その際、タオルの共用も避けた方が良いです。

また、手足口病の原因ウイルスである「エンテロウイルス」は、一般的なアルコール消毒に強いノンエンベロープウイルスと呼ばれる種類のウイルスです。
近年は、ノンエンベロープウイルスにも効果を発揮するような弱酸性タイプのアルコール消毒も発売されています。

手足口病のとき、お風呂に入っても平気ですか?

熱いお湯や石けんは、発疹への刺激となります。
発疹の悪化や家族への感染を避けるためにも、発疹が出ているときは湯船に入るのを控えて、石けんを使わずにぬるま湯のシャワーだけにするとよいでしょう。

また、お子さんの体をふいてあげる時はこすらず、発疹(水ぶくれ)をつぶさないようご注意ください。

手足口病にかかったら、プールはいつからはいれますか?

手足口病は唾液、病変部位から出る液、便などから感染します。プールでは特に、水を通じて他の人に感染が広がる可能性があるため、他の利用者を守る観点からも慎重に行動することが求められます。手や足、口の中に現れる痛みを伴う発疹や水疱が完全に治癒し、新しい水疱が形成されなくなるまで待つことが重要です。

手足口病にかかったら、家庭で気を付けたいことは何ですか?

風邪のときと同じような点に注意するとよいでしょう。
全身状態をよく観察する
顔色や意識状態、おしっこがでているかを確認してください。
水分を摂らせる
口内炎の痛みよって、食事や水分が摂りにくくなるので、脱水症状に注意が必要です。オレンジジュースなど酸味があるものは特にしみるので、子供用イオン飲料や麦茶・牛乳・冷ましたスープなど冷たい飲み物が良いでしょう。
※糖分・塩分も体にはある程度必要です。お水・お茶だけにならないよう注意しましょう。

また、食べ物は薄味や軟らかいものがオススメです。ゼリー、プリン、冷ましたおじや・おかゆ、お豆腐など刺激が少なく、のどごしのよい、さほど噛まずに飲み込めるものがオススメです。
どうしても水分が取れない場合には、点滴等の対応をさせていただきますので、当院までご連絡ください。
けいれんしたとき・ぐったりしているときは、すぐに受診を
「意識(反応)がぼんやり、ぐったりしている」「けいれんした」「水分を摂らない」など全身症状が悪くなったときはすみやかに受診しましょう。

まとめ

手足口病は、夏に小さなお子さんの間で流行する「夏風邪」のひとつです。軽い発熱と手足に小さい水ぶくれのある赤いブツブツや口内炎が現れる、ウイルス感染症です。

保育園や幼稚園で手足口病が流行っていても、ほとんどのケースで自然に回復していきますので、心配ありません。なお、大人も感染することがあり、さらに大人の方が痛みは強かったり倦怠感があったりするなど症状が重くなる傾向があります。また、口内炎の痛みで食事が摂りにくくなるので、脱水症状にならないよう、こまめに水分補給するようにしましょう。

馬込駅前あくつ小児科耳鼻咽喉科

記事執筆者

記事執筆者

馬込駅前あくつ小児科耳鼻咽喉科
院長 岩澤 敬

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医
日本めまい平衡学会 めまい相談医

詳しい院長紹介はこちら

馬込駅前院 予約

西馬込あくつ耳鼻咽喉科
院長 阿久津 征利

日本耳鼻咽喉科学会 専門医
日本めまい平衡医学会 めまい相談医
臨床分子栄養医学研究会 認定医

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小児科は
馬込駅前院のみです

子供の病気

  1. 子どものアトピー性皮膚炎

    子供のアトピー性皮膚炎の原因は、遺伝的な体質の部分と皮膚のバリアが弱っている環境要因があります。特に子供の場合、バリア機能が弱く症状が出やすいのが特徴です。治療として、日頃のスキンケア、悪化要因の対策、ステロイド外用薬を用いて治療を行います。ステロイドへの不安についても説明しています。

  2. 予防接種

    VPD(ワクチンで予防できる病気)から赤ちゃん、お子さんを守るために予防接種を受けましょう。いつから受けるのか、まずは生後2か月からのスケジュールを確認しましょう。基本は「受けらる時期が来たらすぐ受ける」です。当院では1か月前~2日前まで予約が可能です。当日の持ち物:母子手帳と予診票をお持ちください。

  3. 夜尿症(おねしょ)

    夜尿症とは、5〜6歳を過ぎてもおねしょが続くことです。子どもは寝ている間に膀胱をうまくコントロールできないことや、体がまだ完全に成長していないことがあります。多くの子どもは、成長とともに自然に治りますが、もし心配なら、生活習慣を見直すことや、必要に応じてお医者さんに相談することも大切です。

  4. 溶連菌感染症

    喉の痛みや高熱が出る病気で、特に4〜12歳の子どもに多く見られます。感染力が強く、家庭や学校で広がりやすいので注意が必要です。治療には抗生物質が有効で、途中で服薬を止めないことが大切です。早期の診断と治療で、合併症を防げます。気になる症状があれば、早めに医師に相談してください。

  5. 子どもの喘息

    子どもの喘息(小児喘息)の約90%はアレルギーに起因して発症しているため、適切な治療やアレルゲン対策を行うことにより治る可能性があります。ここではこどもの喘息の原因、検査、診断、吸入薬などの薬物治療、悪化因子への対策などをご説明します。こどもの喘息でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

  6. 子どもの嘔吐

    お子さんが嘔吐した時、まずは落ち着いてあげることが大切です。無理に水分を摂らせるのは避け、少しずつ与えましょう。元気であればしばらく様子を見て大丈夫ですが、ぐったりしていたり、発熱や激しい腹痛がある場合は、すぐに医師にご相談ください。

  7. 臍ヘルニア(でべそ)

    赤ちゃんの「でべそ」は、臍ヘルニアと呼ばれ、腸が飛び出して見えることがあります。ほとんどの場合、成長と共に自然に治りますが、見た目が気になる場合は、早めに圧迫治療を始めると効果的です。治療は、赤ちゃんの負担が少ない方法で、治療開始が早ければ短期間で治ることが多いです。気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

  8. 赤ちゃんの夜泣き

    赤ちゃんの夜泣きは、特別な原因がないのに毎晩泣く現象で、病気ではありません。生後3~6か月から始まり、1歳半まで続くことが多いですが、個人差があります。赤ちゃんの睡眠サイクルが未発達なことが原因とされています。親が過度に心配することはありませんが、いつもと違う泣き方の場合は医師にご相談ください。

  9. 乳幼児の便秘

    便秘は「長い間、便が出ない・出にくい状態」のことです。お子さんの便秘は珍しくなく、10人に1人以上が悩んでいると言われています。便秘を放置すると、排便時に痛みを感じ、便意が感じにくくなり、悪化してしまうこともあります。特にお子さんの場合、便秘がイライラや多動など、精神面にも影響を与えることがあります。早めに対処することが大切です。気になることがあれば、一度ご相談ください。

  10. 乳幼児健診

    赤ちゃんや子どもたちは日々成長しています。乳幼児健診は、発育や健康を確認するために行われる定期的な健診です。大田区では、4か月、1歳6か月、3歳児健診は集団で、6〜7か月、9〜10か月健診は個別に行われます。いずれも公費で受けられます。健診で、成長の確認や育児の悩みを相談できますので、お気軽にご相談ください。

  11. 突発性発疹

    突発性発疹は0歳〜2歳の赤ちゃんに多いウイルス感染症で、主に38℃以上の高熱と全身に発疹が現れます。特別な治療は必要なく、安静にして水分補給を心がけましょう。ただし、けいれんや異常な症状が見られた場合はすぐに病院を受診してください。

  12. 細菌性胃腸炎

    食後に下痢や腹痛が起きた場合、細菌性胃腸炎が原因かもしれません。主に夏に多く見られ、カンピロバクターやサルモネラ菌などの細菌が胃腸に感染し、下痢や発熱を引き起こします。特に乳幼児や高齢者は重症化しやすいので、症状が強い場合は早めに受診しましょう。

  13. ヘルパンギーナ

    主に5歳以下の子供がかかりやすい夏風邪の一種です。高熱や喉の痛み、口内炎が特徴で、1週間程度で回復しますが、脱水症状に注意が必要です。大人も感染することがあり、感染予防には手洗いとマスク着用が大切です。

  14. ウイルス性胃腸炎

    お子さんが急に嘔吐や下痢をした場合、ウイルス性胃腸炎の可能性があります。この病気は主に秋から春にかけて多く、ウイルスが胃腸を感染させることで症状が出ます。脱水を避けるため、十分な水分補給が大切です。症状がひどくなる前に、早めに医師に相談しましょう。

  15. 手足口病

    手足口病は、主に5歳以下の子どもに多い夏風邪の一種で、手足や口に痛みを伴う発疹が出ます。軽い熱があり、通常は1週間で回復します。脱水に注意し、症状が重い場合は医師に相談しましょう。大人も感染することがあります。

  16. 咽頭結膜熱(プール熱)

    主に5歳以下の子どもに多い夏風邪の一種で、手足や口に痛みを伴う発疹が出ます。軽い熱があり、通常は1週間で回復します。脱水に注意し、症状が重い場合は医師に相談しましょう。大人も感染することがあります。

  17. 伝染性紅斑(リンゴ病)

    伝染性紅斑は小児によく見られる病気です。典型的な症状は、両頬が赤くなる発疹(リンゴ病)ですが、発熱、倦怠感、関節痛などがみられることもあります。通常は自然に治りますが、まれに重症化することもあります。感染を防ぐためには、手洗いやうがいをしっかり行うことが大切です。