赤ちゃんやお子さんが「嘔吐(おうと)」すると、「何か病気?」と心配される親御さんも多いことでしょう。
まずは、慌てずに吐いたもので窒息しないような姿勢にしてあげることが大切です。
首がすわる前までの赤ちゃんではバスタオルを背中側において「横向きに寝かせる」、首がすわった後のお子さんでは「上半身を起こす・縦抱きにする」などしましょう。
その後、体を拭く・着替えなどを行ってください。
子どもの嘔吐では、生後4か月未満か生後4か月以降かによって、特徴が少し異なります。
いずれの場合も吐いた後、ケロッとして元気に過ごせていれば、基本的に心配ありませんので、様子を見て、医療機関を受診していただければよいでしょう。
ただし、ぐったりしている、嘔吐以外に下痢・発熱などがある、水分が摂れない、おしっこが出ない、 頭をぶつけた後の嘔吐、意識がもうろうとしている、吐いたもの(吐しゃ物)が緑・赤・黒色をしている、その他にも親御さんから見て様子がおかしいと感じる場合は、すみやかに医療機関を受診してください。
赤ちゃん・お子さんの様子で気になることがありましたら、お気軽に当院までご相談ください。
赤ちゃん・子どもの嘔吐の受診目安
赤ちゃん・お子さんが吐いたとき、「今すぐ受診した方がよいのか?」「少し様子を見て良いのか?」と、判断に迷うことがあるかもしれません。
以下に受診目安をまとめたので、参考になさってください。
特に生後4か月未満の赤ちゃんで嘔吐と共に38℃以上の高熱があったり、2歳以下のお子さんで嘔吐に加えて下痢がみられたりする場合には、脱水症状など合併症を引き起こしやすいので、早めの対応が必要です。
また、親御さんから見て、「いつもと違う様子で何かおかしい」と感じたときは、すぐに受診されることをおすすめします。
※以下のリストはあくまでも目安であり、この限りではありません。
すぐ病院を受診した方が良い(夜間・休日救急など含む)
次のような症状がある場合には診療時間外でも、夜間・休日救急などを利用して、すぐに医療機関を受診してください。
状況によっては、救急車の要請をしましょう。
- 緑・赤・黒色をしたものを吐いた
- 意識障害がある、呼びかけに反応しない、寝てばかりいる、機嫌が悪い
- 何度も嘔吐して(目安は1日5~6回以上)、水分が摂れない
- 吐いたあとに高熱が出た(特に生後4か月未満の赤ちゃん)
- 呼吸が苦しそう
- けいれんを起こした
- 半日以上おしっこがでていない
- 頭をぶつけた後
急がず、診療時間内に受診した方が良い
急いで受診しないまでも、診療時間内に一度受診することをおすすめします。
- 発熱・くしゃみ・鼻水・鼻づまり・下痢などの症状がある
- 何度か嘔吐しているが、水分は摂れている
- おしっこ・うんちの回数が少なく、体重も増えていない
ホームケア(様子見)で良い
気になる様子があれば、受診しましょう。
- 1~2回程度の嘔吐
- 嘔吐後は、元気に機嫌良く過ごせている
- 心配な症状はみられない
子どもの嘔吐とは?
子どもの嘔吐では、「生後3か月までの赤ちゃん」「生後4か月以降の赤ちゃん・お子さん」かによって、主な原因などの特徴が少し異なります。
いずれの場合も吐いた後、ケロッと元気に過ごせていれば、基本的に心配ありませんので、様子を見て、医療機関を受診していただければよいでしょう。
ただし、特に2歳以下の小さなお子さんでは、「何度も嘔吐を繰り返す」「嘔吐だけでなく下痢も続く」という場合は、脱水症状などを重症化しやすいので注意が必要です。
生後4か月未満の赤ちゃんの嘔吐
「赤ちゃんが母乳・ミルクをよく吐く」……赤ちゃんの親御さんに多いお悩みのひとつです。
生後4か月頃までは胃と食道をつなぐ逆流防止の弁が未発達なので、健康であってもちょっとの刺激ですぐ吐き戻してしまうことがよくあります。
ゲップをしてから寝かせたのに、母乳・ミルクを口からダラダラ流れるように吐いてしまうことが多いのは、そのためです(溢乳:いつにゅう)。
吐いた後にケロッと機嫌よく過ごせており、体重が少しずつでも増えていれば、特に心配はありません。
問題となる嘔吐は、以下のようなケースです。すみやかに医療機関を受診しましょう。
- 授乳後、毎回ドバっと噴水のように吐く
- 嘔吐以外の症状(発熱・下痢・血便・顔色が悪い・哺乳不良・不機嫌など)がある
- 授乳すると、呼吸がゼイゼイと乱れる
- 吐く量が多く、体重が増えない
- 急に発症した
生後4か月以降の赤ちゃん・幼児さんの嘔吐
生後1歳頃までは胃の形の影響が残るため、授乳後に寝返り・ハイハイなど身体を動かすときに吐き戻してしまう子もいますが、生後すぐの赤ちゃん時期と比べると、吐くこと自体は少なくなっていきます。
一方で、お母さんからの免疫がなくなってくる生後6か月を過ぎると、風邪やウイルス性胃腸炎などの感染症による嘔吐が多くなってきます(感染症による嘔吐)。
咳き込むことで吐いてしまう場合がありますが、少量であれば心配ありません。
ただし、次のような症状がみられる場合には、他の病気が嘔吐の原因となっている可能性があるため、すみやかに医療機関を受診しましょう。
- 嘔吐以外の症状(発熱・下痢・頭痛・血便・顔色が悪い・元気がないなど)がある
- 授乳すると、呼吸がゼイゼイと乱れる
- 吐く量が多く、体重が増えない
- 急に発症した
子どもの嘔吐で考えられる原因
お子さんの嘔吐では単なる飲みすぎ・食べすぎ以外に、胃の発達上の問題、感染症や胃・腸などの病気、頭をぶつけたことなど様々な原因が考えられます。
よくある嘔吐の原因
- 胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう)
赤ちゃんでは胃の入り口を締める筋肉の発達が未熟なので、飲みすぎ・食べすぎ、授乳後すぐ寝かせる・体を動かすなど、ちょっとした刺激で逆流してしまうことがあります。
「1回の授乳量を1~2割減らす(その分、授乳回数を1~2回増やす)」「授乳後30分程度、縦抱きをする」ことにより、改善が期待できます。また、通常1歳頃までに自然に治ります。
ただし、授乳後に呼吸がゼイゼイする、慢性的な咳、体重が増えないなどの症状がみられる場合には、別の病気の可能性が疑われるため、一度ご来院ください。 - 空気嚥下症(くうきえんげしょう)
母乳・ミルクを飲むときに空気も一緒に飲んでしまい、ゲップと同時に吐いてしまうことがあります。生後4か月未満の赤ちゃんに多く、特に哺乳瓶の乳首の穴が小さいと起こりやすいです。
ゲップと一緒に吐くことが多い場合には、ゆっくり時間をかけて丁寧にゲップをさせてあげると良いでしょう。 - 急性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎・細菌性胃腸炎)
生後6か月以降のお子さんの嘔吐の原因で多いのが、「急性胃腸炎」です。
急性胃腸炎には「ウイルス性」と「細菌性」があります。
ウイルス性胃腸炎は「お腹の風邪」とも呼ばれ、主にロタウイルス・ノロウイルスなどのウイルスが原因となり、嘔吐以外に下痢や発熱も伴います。 食中毒を含む、細菌性胃腸炎もウイルス性同様の症状がみられます。2歳頃までは脱水症状になりやすいので、水分が摂れない、おしっこや涙が出ないなどの症状がみられましたら、早めに医療機関を受診しましょう。
なお、急性胃腸炎では吐いたもの・便に大量の病原体が含まれています。家族内感染など二次感染に対する注意が必要です。 - 幽門狭窄症(ゆうもんきょうさくしょう)
胃と十二指腸の間「幽門」の筋肉が厚くなり、胃の出口が狭くなるため、母乳・ミルクが逆流して「突然、噴水の様にドバっと吐く」「吐いた後は、すぐ母乳・ミルクを飲みたがる」「体重増加が少ない・減少する」という特徴があります。 生後2~3週頃からみられます。放置していると、脱水症状により、ぐったりとして顔色が悪くなります。すぐに受診しましょう。 - 咳込んだときに嘔吐する
お子さんでは、風邪など咳込んだときに嘔吐してしまうケースもよくみられます。
とはいえ、心配になりますよね。
大人と比べて、子どもはいきむ力が弱く、気道に溜まった分泌物を咳で排出うまくできないので、咳をする回数が多くなります。さらに、咳をするときに、空気も一緒に吸い込むので、次第にお腹が張っていきます。そうすると、余計に咳が出やすくなるのです。
咳き込んでの嘔吐は、胃の中身だけでなく気道にあるウイルス・細菌など病原体を一緒に出すので、こじらせたり重症化を防いだりする一面もあります。そのため、咳き込んで吐いても、その後元気に過ごしているのであれば、心配ありません。
ただし、息もできない程苦しそう、水分を摂れないほど嘔吐を繰り返す、酷い咳が続いているときにはすみやかに医療機関を受診しましょう。
注意したい嘔吐の原因
まれに、次のような病気が嘔吐の原因となることがあります。
放置すると、重篤な症状が現れる場合があるので、すぐに医療機関を受診しましょう。
- 頭を打った後(脳震盪:のうしんとう)
お子さんが頭をぶつけたときに「ゴツン」と音がしたら、心配される親御さんも多いことでしょう。 頭をどこかにぶつけた直後から1~2時間くらいの間に、頭痛・吐き気・嘔吐・一時的な失神状態を起こすことを「脳震盪」と呼びます。 「ベッドから落ちる」「滑って床にぶつける」「柱にぶつかる」など、お子さんの脳震盪は意外とよくあります。
ぶつけても脳出血を伴っていないケースが多く、通常は治療せずとも自然に回復します。 しかし、頭を打ってから2時間過ぎても、繰り返し嘔吐など何か症状がある場合には、脳出血の疑いがあるため、夜間・休日でもすぐに医療機関を受診しましょう。
また、「意識がない・つねっても反応がない」「けいれんした」「手足が動かない(片側でも)」という症状があれば、救急車の要請など緊急受診が必要です。 - 腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)
腸が腸管にはまり込む病気です。めったにない病気ですが、発症ピークは生後7~9か月であり、2歳以下のお子さんに起こりやすいです。
また、ロタウイルスワクチンの副反応として、接種後に発症することがあります。
短い間隔(数分~10分くらい)で腹痛を起こし、火が付いたように泣き叫んだり、急に遊びだすなど静かになったりする状態を繰り返します。 その後、腸閉塞を起こして嘔吐し始めます。時間経過により、鮮血(いちごジャム状)の血便が出て、次第にぐったりしていきます。 発症から24時間以内に高圧浣腸など治療を行わないと、腸が腐ってしまう可能性があり、その場合には開腹手術が必要となります。 - 腸閉塞(ちょうへいそく)
「イレウス」とも呼ばれ、何らかの原因で腸管の通過障害を起こして、食べ物・消化液など内容物の流れが止まってしまう状態です。 腸管が閉塞するので、腸が膨れてきて、嘔吐以外に腹痛、便が出ない、ガス(おなら)が出ない、お腹が張るなどの症状がみられます。 脱水や電解質異常、重篤になるとショック状態・意識障害が起こる可能性があるので、すぐに医療機関を受診する必要があります。 - 髄膜炎(ずいまくえん)
脳に細菌・ウイルスが入り込んで炎症を起こす病気です。頭のてっぺん(大泉門:だいせんもん)が腫れる特徴があります。ただし、脱水があると、さほど腫れない場合もあります。 ウイルス性の多くは自然に治りますが、細菌性では後遺症や命に関わることがある病気です。嘔吐以外に、発熱、強い頭痛があるときはすぐに医療機関を受診しましょう。
なお、近年は生後2か月になると、ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンの予防接種が定期接種として行われているため、危険な化膿性髄膜炎の感染率は減少しています。 - 腸回転異常症
お母さんのお腹の中にいるとき(胎児期)、成長の過程で腸管がお腹の中で正常な位置に収納されなかった状態です。発症時期は生後1か月以内が約30%、5歳までが約75%です。 黄色の胆汁を吐くほか、急な腹痛がみられます。赤ちゃんでは命の危険があるため、緊急で医療機関を受診する必要がある病気です。 - 食物アレルギー・消化管アレルギー
食物アレルギーでは、特定の食品を摂取することで、数十分~数日後にアレルギー反応として、嘔吐・下痢・めまい・じんましんなどの症状が現れます。
また、近年、卵黄や牛乳などを摂取してから、数時間後に嘔吐する「消化管アレルギー」の赤ちゃんが増えています。 一般的な食物アレルギーは初回から皮膚症状が出ることがほとんどですが、消化管アレルギーでは皮膚症状は現れません。 さらに初回は嘔吐せず、2~3回目以降、毎回嘔吐することで「おかしい」と感じて医療機関を受診される方が多いです。
気を付けたい合併症「脱水症状」
お子さんの嘔吐で気を付けたい合併症に、「脱水症状」があります。
特にお子さんは、大人と比べて体内の水分割合が多い上、水分調整機能が未熟なので、脱水になりやすい特徴があります。
以下のような症状が1つでもみられるときは、脱水状態の可能性が高いので、すみやかに医療機関を受診しましょう。
- おしっこの量・回数が少ない
- おしっこの色が濃い
- 皮膚や唇が乾燥している
- 泣いても涙が出ない
- 目が落ちくぼんでいる
- 皮膚に張りがない
- 機嫌が悪い
- ぼんやりして、眠りがち
- 顔色が悪い
そのほか、脱水に伴うけいれん・ショック、脳症などの合併症を引き起こすことがあります。
嘔吐時の脱水予防には、ナトリウム・カリウムなどが含まれる「経口補水液」がオススメです。ただし、母乳やミルクが飲める場合には、無理に経口補水液に変更する必要はありません。
嘔吐の検査・診断
何度も繰り返す嘔吐では、背景に重大な病気が隠れていることがあります。
必要に応じて、次のような検査を行います。
- 腹部レントゲン検査
腸閉塞などが疑われる場合に行います。 - 腹部超音波検査
腸重積・肥厚性幽門狭窄症・急性虫垂炎などが疑われる場合に行います。 - 採血検査
血液中の白血球数・CRP(炎症反応)・電解質・腎機能の確認をすることで、炎症傾向や脱水になっていないかをチェックします。 - 尿検査・尿沈渣(にょうちんさ)
ケトン体が陽性だと、周期性嘔吐症(肉体的・精神的ストレスがかかったときに、嘔吐・頭痛・腹痛がみられる病気)などの可能性があります。 - 頭部CT検査
頭を強くぶつけてから2時間以上経っても、繰り返し嘔吐がある場合、脳出血が疑われます。 症状など外からの診察だけでは「脳震盪」と「脳出血」を正確に判断できないため、頭部CT検査による確定診断が必要となります。
※必要に応じて、対応病院をご紹介させていただきます。
嘔吐の治療
病院では、嘔吐の原因に応じて対応します。
制吐剤などの「対症療法」、脱水を防ぐための「水分補給」、嘔吐の背景に病気がある場合には根本原因の病気に対する治療を行います。
脱水症状がある場合には、医療機関で点滴を行います。
嘔吐時の自宅での対処法(ホームケア)
吐いても、その後元気であれば、ひとまずホームケア(ご家庭での対応)にて様子を見ましょう。
嘔吐時のホームケアのポイント
- 吐き気が強いときには、無理に水分を摂らせない
かえって嘔吐が増えて、脱水リスクが高まります。吐き気が落ち着いてから与えます。 - 水分が摂れるようになってから、食事を摂る
胃腸を休ませるため、できるだけ固形物を避けて、消化しやすいものから摂るようにしましょう。軟らかいごはん・おかゆ・うどんなどの炭水化物や、脂分の少ない白身魚・卵・豆腐もオススメです。 冷たいものよりも、常温・少し暖かいものを少量ずつ食べます。 - 寝るときは体や顔を横向きにする
吐いたものが喉に詰まらないよう、横向きの体勢にしてあげましょう。 背中にバスタオルなどを挟んであげると、楽に横向きになれます。 - 吐いたものを処理した後は、必ず手を石けんでよく洗う
特に急性胃腸炎が原因となっている場合、吐しゃ物(吐いたもの)だけでなく便にも病原体が大量に含まれています(※治癒後1か月間程度、排出されます)。
マスクや使い捨て手袋をしてから処理し、胃腸炎の主な原因となるノロウイルス・ロタウイルスはアルコールに抵抗性があるため、次亜塩素酸ナトリウムまたは塩素系漂白剤による消毒を行うなど、 二次感染を予防しましょう。 - 脱水になっていないか、注意深く観察する
1日の嘔吐回数、1回あたりの嘔吐の量、水分摂取量、尿は出ているか?など、様子を注意深く観察してください。
どうしても水分が取れない場合には、点滴等の対応をさせていただきますので、当院までご連絡ください。あまりに脱水が進むと、血管が細くなりすぎて点滴が難しくなるので、早めにご来院ください。 - いつもと違った様子がみられたら、早めに受診を
「反応がぼんやり、ぐったりしている」「おしっこが出ない」「泣いても涙が出ない」「皮膚・唇がカサカサ」など普段と違う症状や症状の改善がみられないときには、すみやかに医療機関を受診しましょう。
嘔吐のときの水分補給
大人と比べて、子どもでは体の体重に占める水分量が多いため、何度も嘔吐すると脱水症状を引き起こす心配があります。
ただし、脱水症状が心配だからと、やみくもに飲ませることは逆効果です。
嘔吐すると、一緒に電解質(ナトリウム・イオン)も排出されています。そのため、ナトリウムなどを含まない麦茶・お茶・水ではなく、スポーツ飲料・イオン飲料、特に「経口補水液」を少量ずつ飲むようにしましょう。
※経口補水液は、主に薬局などで販売されています。ドリンクタイプ・飲むゼリータイプが販売されていますが、おうちにあるもので作ることも可能です。
経口補水液の作り方
沸騰させた水1リットルに、塩小さじ1/2(約3g)、砂糖大さじ4と1/2(約40g)を混ぜます。さらに、レモン・グレープフルーツなど果汁を混ぜると、飲みやすくなります。
- 水分摂取は嘔吐後1時間経ってから
嘔吐したときの腸の中は、吸収が非常に悪いので、すぐの水分摂取はNGです。
嘔吐した直後は口をゆすぐ程度にしておいて、1時間くらい腸を休ませてから、水分を摂り始めましょう。
赤ちゃんの場合も授乳は、嘔吐から1時間程度控えましょう。
また、1回あたりの授乳時間を短めにして、少しずつ与えます。 - ティースプーン1杯の量を5分間隔で飲むことからスタート
嘔吐後1時間あけて、ティースプーン1杯もしくはペットボトルのふたの内側の線(一番上の線:約5ml)から始めます。
5分間隔で、約5mlの量を飲む方法を1時間くらい続けましょう。
続けてみて、症状の悪化がみられなければ、スプーン(ペットボトルのふた)2杯、3杯と少しずつ1回量を増やします。
途中で吐いてしまったら、また嘔吐後1時間開けて5mlを5分間隔で飲むところから始めます。
よくあるご質問
病院を受診するときに、確認しておくと良いことはありますか?
嘔吐で受診される場合、次のようなことを確認しておくと、診察の補助として役立ちます。
また、吐いたものをカメラで撮っておいて、受診時に医師に直接見せることもおすすめです。
- 吐いた回数
- どんな状態・どんなときに吐いたか?
- 吐いたものの色・内容(透明・緑・赤・黒など色はついているのか?)
- 水分がとれているか?
- おしっこは出ているか?
- 最後に吐いたのはいつか?
- 嘔吐以外の症状はあるか?
脱水が心配なのですが、どうすれば早めに気づけますか?
お子さんは体重に対する水分量が多いので脱水になりやすいとは言われていますが、1~2回の嘔吐だけで脱水することは、まずありません。
簡単な脱水評価として、CRT(毛細血管再充満時間)があります。
これは、お子さんの親指の爪を5秒間押してみて、爪の赤みが回復するまでの時間で循環機能を簡易的に評価する方法です。
2秒以内に赤みが戻れば循環機能に問題はみられず、3秒以上赤みが戻らなければ、脱水傾向があると評価できます。
(図)CRT(毛細血管再充満時間)による簡易評価
子どもの嘔吐を処理するとき、気を付けたいことは何ですか?
お子さんが吐いた時点で、「もしかしてウイルス性胃腸炎かも」と考えて、二次感染対策を取るようにすることをおすすめします。
お子さんの嘔吐の原因として、まず挙がってくるのが、厄介な感染症「ウイルス性胃腸炎」です。ウイルス性胃腸炎は感染力が強いので、予防対策を取らないと、ご家族全員にうつってしまいます。「嘔吐下痢症」とも呼ばれ、特に2歳以下のお子さんでは脱水など重症化しやすいです。
二次感染対策の基本となるのが、「うがい」「手洗い」です。
さらに、おもちゃ・タオル・食器の共用を避け、ドアノブなど共有部分を消毒しましょう。なお、胃腸炎の原因となるロタウイルスやノロウイルスには、アルコールは効かないので、消毒には次亜塩素酸ナトリウムを使うとよいです。近年は、ロタウイルスなどノンエンベロープウイルスにも有効な「(弱)酸性アルコール消毒剤」が発売されています。
お風呂は入って良いですか?
吐き気が強いときや元気がないときは、お風呂を控えましょう。
元気ならば、シャワーを浴びる、軽く入浴する程度は構いません。ただし、体を洗ってから浴槽に入り、長湯にならないよう注意しましょう。
まとめ
お子さんの嘔吐には、様々な原因があります。
赤ちゃんでは胃の発達上の問題から、すぐ吐いてしまうことがよくありますが、体重が増えていれば、特に問題ないので心配ありません。
生後6か月以降の赤ちゃん・お子さんでは、胃腸炎が嘔吐の原因となることが増えてきます。ウイルス性胃腸炎は感染力が強いので、ご家族への二次感染に注意が必要です。
吐いたものを処理するときは、必ずマスクや手袋をしてすみやかに処理してください。
基本的に1~2回吐いても、その後元気に機嫌よく過ごせているのであれば、慌てて医療機関を受診せずに、ご家庭で少し様子を見て、気になることがあれば、診療時間内での受診という形で大丈夫です。
ただし、「ぐったりしている」「嘔吐回数がやたら多い」「緑・赤・黒色のものを吐いた」などの場合にはすぐに医療機関を受診する必要があります。また、赤ちゃんや小さなお子さんは、嘔吐を繰り返すと、脱水になりやすいので、水分が摂れないときには早めにご来院ください。