うまみ成分に隠されたダシの効果

当院では、患者様からよくある質問や伺う症状やライフスタイルに対して改善方法を院長が調べ、患者様にはもちろん、スタッフへ栄養素や普段の食生活に関する勉強会を開催しています。

今年に入ってから当院HPには「栄養外来」のページを作成し、栄養素に関してや栄養士の大塚さんに提供していただいたレシピを掲載しています!今回は、栄養士ブログアップしている和風ボーンブロスの出汁について詳しく説明します✨
※出汁の作り方は和風ボーンブロスのページからご確認ください

症状の確認

まずはご自身やご家族・周りの方に下記のような症状がないかを確認しましょう。

□疲労感:ストレスを感じた時や夜に悪化、ひどくなると朝なかなか動けない
□精神不安定:落ち着きがない、興奮状態、上の空、気が散ってしまう、我慢が出来ない
□消化器異常:食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛
□疲れやすい、集中力がない
□イライラが続く、感情を抑えられない
□気分が塞がってしまう
□欲求過多:塩分、砂糖、カフェイン、スパイスなどを欲する
□動悸、過呼吸(パニック発作)がある
□顔色が悪い
□悪寒もしくは冷や汗がある
□夜なかなか寝ることができない
□夜中にトイレで起きてしまう
□夕方になってくると体力がなくなりやる気がなくなってしまう
□PMS(月経前症候群)
□皮膚の炎症
□冷え性
□胃の調子が悪くなることがよくある
□ついつい食べ過ぎてしまう

なぜ出汁が身体にいいか

味噌汁や煮物など多くの日本食に欠かせないのが出汁です。ユネスコ無形文化遺産に認定され、海外の人も出汁に関心を持っている人が多いようです。普段何気なく食べているおかずなどに含まれている出汁には、水に溶けだしたうまみ成分があり、さまざまな健康効果があると言われています。

うまみ成分は、旨さや美味しさとは違う成分です。日本の方が1908年に東京帝国大学の池田教授が、昆布の中からうま味成分である「グルタミン酸」を発見したことがはじまりです。うまみは、甘味・酸味・塩味・苦味をまとめたもので、「他の味を混ぜ合わせてもつくることのできない独立した味」のことを指します。なかなか言葉ではお伝えづらいのですが、口に含んだときに感じる深いコクやまろやかな味わいがうまみ成分と呼ばれるものです。

<発見されたうま味成分>
■昆布:グルタミン酸
人の身体の20%はタンパク質でできていますが、これを構成するのが20種類のアミノ酸です
グルタミン酸は20種類のうちのひとつです
植物性・動物性どちらの食材にも含まれているグルタミン酸は、なんと母乳にも多く含まれています
グルタミン酸はたんぱく質を構成したり、脳の興奮系神経伝達物質としての機能を担っていて、
実は私たちの体の維持のためには必要不可欠な存在です

■かつお節:イノシン酸
人の体内では毎日細胞が新しく生まれ変わっていますが、
細胞が生まれ変わるときに欠かせない核酸を構成する成分のひとつです
かつお節や豚肉、鶏肉など、魚や肉類に多く含まれています
イノシン酸には細胞が活性化され、新陳代謝を促す作用があります

■しいたけ:グアニル酸
イノシン酸と同じ核酸のひとつです。「グルタミン酸とグアニル酸」の組み合わせは
「旨味の相乗効果」と言われています
干ししいたけ、乾燥ポルチーニ茸、のり、ドライトマトなどに含まれています

旨味によって料理の減塩ができる点が魅力です。
現代はフォースとフードなど味の濃いものを摂取することが増えました。それにより、生活習慣病や肥満など身体に色んな影響があります。

油や砂糖を食べると脳が快感を得ることが分かっていますが、それと同様にだしにも脳に快感を送りやみつきにさせる作用があることが分かっています。物足りなく感じる減塩料理も、旨味によっておいしく感じられるようです。現代の食生活をリセットするために出汁から用意して食事をするのがおすすめです。

心の安定

お味噌汁を飲んだ時に不思議とホッとしませんか?実は、うまみ成分には精神的な安定を促す作用があることが何分かってきています。特にかつおだしは、緊張感や不安感など様々な精神的な感情を改善させるという報告があり、ストレスを軽減する効果があると言われています。また、出汁に含まれているグルタミン酸により胃の運動が活発化することで食欲が安定し、自律神経や精神状態が作用する可能性があるという報告もあります。コーヒーや紅茶、緑茶のようにカフェインを毎日何杯も飲まれている方は、出汁へ変更することで良い睡眠に繋がるかもしれません。

また、温かい出汁を摂取することで体が温まり、血流が促されるため、冷えの改善効果が期待できます。125mlのカツオだしを摂取することで皮膚の血流量がアップしたという報告もあります。ま血流が良くなると、身体の冷えだけでなく、肩こりや頭痛を和らげる作用が期待できる。また、ストレスや疲労回復にも役立つと言われています。

食べ過ぎを防ぐ

脳内には食欲を抑える働きをするヒスタミンという物質があります。しかしこの物質は食べ物から直接摂取することができません。しかし、かつお節に含まれるヒスチジンは食欲を抑制する効果があると言われています。酵素の働きによってヒスチジンがヒスタミンとなり、脳内の満腹中枢を刺激するからです。研究ではヒスチジンを多く含む食品を摂取しない人に比べ、摂取している人は、1日の摂取カロリーが少ない傾向にあることがわかっています。

ヒスタミンは脳内で作られるのですが、交感神経を刺激することで脂肪燃焼を促進し、内臓脂肪を減少させる働きが同様にあると言われています。

そもそも食べ過ぎてしまう原因は、太りやすい食事を好んでいることにあります。ダイエットをしようと急に味の薄いヘルシーなものを食べても、ストレスが溜まり、また元の食事に戻ってしまった経験はないでしょうか?毎日コンビニやスーパーのおかず、冷凍食品やインスタント食品に頼っていると知らぬ間に正常でない味覚になってしまいます。下記の1つでも当てはまる場合、食事の改善が必要です。

□ コンビニ弁当やスーパーの総菜が好き
□ おなかが空いていなくても、食事の時間になったら食べる
□ 肉はヒレよりロース派
□ 焼き鳥は塩よりタレ派
□ こってりした味が好き
□ スイーツは別腹
□ 添付のタレやドレッシングは使い切る
□ ソースやケチャップは必ずつける
□ 外食が週5回以上

疲労改善

カツオ出汁には、三大アミノ酸と言われるイノシン酸、グルタミン酸、グアニル酸がすべて含まれています。昼夜を問わず泳ぎ続けるカツオには、酸の分解を促進・疲労回復を助ける「カツオ・ペプチド」が豊富に含まれており、強力な疲労回復効果があると言われています。その他にもアスパラギン酸というアミノ酸が含まれており、疲労物質の乳酸を分解する働きがあります。夏バテシーズンなどにもおすすめです。

アスパラギン酸:
名前にあるように、アスパラガスに多く含まれるアミノ酸です。体内で窒素やエネルギーの代謝に関係しています。

その他

《脂肪の吸収抑制》
昆布のネバネバは水溶性食物繊維のアルギン酸が含まれています。過剰な脂肪の吸収を抑制したり、血糖値の急激な上昇を抑える作用があります。また、昆布のだし汁で内臓脂肪の蓄積が抑えられるという動物実験の報告もある。カツオだしと同じように食欲の暴走を防ぐ働きもあります。

《美容》
だしの材料となるには、かつお節や煮干し、昆布には多くの栄養が含まれています。例えば、昆布出汁にはタンパク質や美肌を保つビタミン・ミネラルなどの美容成分が豊富に含まれています。かつお節や煮干しには皮膚や髪などのもとになるアミノ酸が含まれています。その他にもイノシン酸の新陳代謝を促す作用などによって美肌効果もあると言われています。

「心の安定」でも記載しましたが、温かいだしを飲むことで血流が良くなります。肌荒れは血行不
良の状態が原因で起こる場合があります。高い化粧品などを使っていても、きちんとした食事をとっていなければ肌荒れになってしまうということです。歳をとるごとに増えていく肌の悩みを改善したり、乾燥肌対策ができます。また体内に溜め込んでいた老廃物をスムーズに排出する作用があると言われています。

作ることがめんどくさい時は?

だしは作ってしまえば簡単ですが、昆布を水に戻したりとやはり時間はかかってしまうもの。時間がなかったり、体調的に作る元気がないという場合は、「スープ・スープ」を活用してみるのはいかがでしょうか?

市販のだしには添加物などが含まれているものもありますが、この粉末だしは天然素材100%の無添加の粉末だしです。国産のイワシ、カツオ、無臭ニンニク、昆布が使用されており、化学処理はせずにじっくり煮込んでエキスを抽出して仕上げられています。粉末になっているので、お湯で溶かすだけでだし汁が出来上がりますし、炒飯や野菜炒めなどにも活用できます。

まとめ

お味噌汁やだし巻き卵、日本食では朝ごはんから夕飯までだしが味の決め手にもなってきます。何気なく摂取していた出汁が身体のさまざまな部分に関係していたことを知ったあなたはきっと、だしを飲みたくなっているはずです。

出汁の入った料理と言うと、少し敷居が高いと思っている方もいらっしゃいますが、昆布に煮干しもしくはかつお節などがあれば、簡単にできてしまいます。是非、試してみてください。一度作ってしまうと習慣になり、作ることが習慣になります!もし疲れて出汁を取るのも無理という場合は、先ほどご紹介した「スープ・スープ」を活用して温かいだしで心も身体も温めましょう。

記事執筆者

大塚 智美

・現役保育園栄養士
・時短料理研究家

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