「耳だれがでる(耳漏:じろう)」とは、耳から液体が出てくることで、主に耳のどこかで炎症・化膿が起こっているサインです。
耳だれの性質は、さらっとした液体、粘り気のある液体、膿の混じった液体、血の混じった液体など原因によって異なり、主な原因は「鼓膜に穴が開いた状態の中耳炎」「慢性中耳炎」「外耳炎」となっています。
しかし、まれに真珠腫性中耳炎、外耳道がん、悪性外耳道炎、頭部損傷などでも、耳だれが起こるため、耳だれ(耳漏)以外にめまい、発症した耳側が聞こえづらい(難聴)、最近頭に大けがをした、耳や周囲の赤み・腫れがある場合には、すぐにご来院ください。
耳だれの治療は原因ごとに異なりますが、基本的には耳だれの吸引・洗浄と抗菌薬や点耳薬などの薬物療法を行って、細菌の増殖を抑えます。
同時に、日常生活においては、耳だれが出ている間、耳に水が入らないよう注意しましょう。
「慢性中耳炎」など耳だれを繰り返す場合には、手術を行った方が良い場合もあります。
耳だれ(耳漏)が出る方は、当院までお気軽に相談ください。
「耳だれ」の性質から考えられる病気とは?
1)さらっとしている液体(漿液性:しょうえきせい)
・外耳道湿疹(がいじどうしっしん)
外耳からの耳だれは、さらっとしていて黄色味を帯びた透明な液体(漿液)です。
外耳道湿疹は強いかゆみが特徴で、耳の穴の入り口付近(外耳道)の皮膚が、ガサガサ・じくじくしている状態です。
耳掃除のやりすぎが一番の原因で、シャンプーなどが耳に入ることでも起こりやすくなります。
2)膿(うみ)のような液体
・外耳炎
外耳炎は、耳掃除のやりすぎや爪で耳の中をかいてできた傷口が細菌感染を起こした状態です。そのため、耳だれは白っぽい膿状となります。
強いかゆみや腫れ、詰まった感じの症状が現れ、耳たぶを引っ張ったり、押したりすると、より痛みが強くなる特徴があります。
・急性中耳炎
中耳炎は風邪などの後に起こることが多く、鼻や喉から入った菌やウイルスが耳管(じかん)を通じて耳(中耳)に入り感染することで、炎症を起こします。
鼓膜に膿が溜まっていき、鼓膜が破れると、中から黄色っぽい粘り気のある耳だれが出てきます。
鼓膜に膿が溜まっていく過程で強い耳の痛みを感じます。痛みは鼓膜が破れると軽減しますが、中耳炎は治っていないので、必ず耳鼻咽喉科を受診しましょう。
・慢性中耳炎(増悪期:症状が悪化しているとき)
急性中耳炎が治りきっておらず、鼓膜の穴が開いたままの場合、風邪を引いたり、入浴などで耳に水が入ったりすると、耳だれとして膿が出てきます。
増悪(ぞうあく)期の慢性中耳炎では、耳の痛みがあります。感染が長引くと、ポリープ(病変)や骨が破壊されて難聴を起こす“真珠腫性中耳炎”に発展することもあるので、早めにご来院ください。
3)粘り気のある液体
・慢性中耳炎(増悪期以外:症状が悪化していない時)
慢性中耳炎でも増悪期以外では、耳の痛みはなく、粘り気のある耳だれが出てきます。
ずっと耳だれが出ている場合もありますが、風邪の時だけなど限定的な場合もあり、耳だれの出方には個人差があります。
4)血の混じった液体
・真珠腫性中耳炎
真珠腫性中耳炎は、鼓膜の一部が中に入り込むことで垢(角化物)が溜り、溜まった垢は次第に周りの骨や組織を壊していきます。
真珠腫性中耳炎のときの耳だれは、細菌感染を起こすため悪臭がしたり、血が混じったりすることがあります。
早めに治療しないと、髄膜炎など危険な合併症に発展することがあるので、耳だれ以外にも難聴(初期は軽い)、めまい、顔面神経麻痺などの症状がある場合には、すぐにご来院ください。
・外耳道がん
慢性中耳炎や長期間の外耳道炎から発展することがある、希少ながんです。
高齢者に見られ、血の混じった悪臭のする耳だれが出ます。
・壊死性外耳道炎(悪性外耳道炎)
外耳道がん同様、血の混じった悪臭のする耳だれが出ます。
高齢の糖尿病患者さんに見られます。
5)水様性の液体
・頭に大けがをした後、脳神経外科手術をした後
頭蓋骨の内側から脳脊髄(せきずい)液が漏れて出ている場合には、水のような耳だれが出ます。
耳だれの色は、透明~血液のようなものまで様々見られます。
頭部損傷後や脳神経外科手術後に現れた場合には、すぐにご来院ください。
必要に応じて、頭部CT検査ができる病院をご紹介いたします。
耳だれ(耳漏)が出る場合の検査
問診・視診
耳だれ(耳漏)が出る前に「風邪の症状がなかったか?」「これまで耳だれがでたことがあるか?」「耳の痛みがあるか?」など、詳しくお伺いします。
耳だれを吸引後、内視鏡カメラを使って、鼓膜や外耳の状態を丁寧に確認します。
当院の内視鏡検査では、患者様と一緒に耳の中や喉の状態を確認できるように2つのモニターを設置して、「目で見て納得できる医療」を提供しています。
細菌培養検査
耳だれは綿棒で採取します。
結果が出るまで数日かかりますが、病原菌の種類やどの抗菌薬が効きやすいかを調べるために有効です。
ほかにも、難聴が疑われる場合には「聴力検査」を行い、場合によっては「CT検査・MRI検査」が必要となることもあります。
耳だれ(耳漏)の治療法
耳だれの吸引
クリーナーなどで耳だれを吸い取ります。
薬物療法
主に抗菌剤の内服や点耳薬(耳に直接入れる薬)を使用して、細菌の増殖を抑えます。
そのほか原因に応じて、抗ウイルス薬・ステロイド薬なども併用します。
耳だれの原因が急性中耳炎の場合、鼻炎や副鼻腔炎が中耳炎の引き金となっていることもあるため、鼻水の吸引やネブライザーによる吸入を行うことがあります。
外科的手術
耳だれを繰り返すことのある慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎が原因の場合、手術を行った方が良いケースもあります。その場合には、適切な医療機関をご紹介します。
よくあるご質問
1)耳だれ(耳漏)が出たときの応急処置は、どうすればよいですか?
こより状にしたティッシュや綿棒で耳の奥にある耳だれまで拭こうとするのは、NGです。
“耳の穴から出た”耳だれのみ、濡らして絞ったティッシュ等で拭いてください。
あまり強くこすると、かえって炎症をひどくすることがありますので、優しく拭きましょう。
耳だれが落ち着いた場合でも、耳の中は治っていません。翌日必ずご来院ください。
2)耳だれが出ている時は、お風呂やプールは入ってよいのでしょうか?
耳だれが出ている時もお風呂に入ったり、髪を洗ったりしても構いませんが、耳に水が入らないよう注意してください。
ワセリンを塗った綿を丸めて玉を作って、耳に詰めるとよいでしょう。
また、プールは耳の中に水が入って、症状が悪化してしまう可能性があります。
医師の許可が出るまでは、お休みした方が良いでしょう。
まとめ
耳だれが出ても、痛みが伴っていないことも多いので、ついつい耳鼻咽喉科への受診を後回しにしてしまう方もいるかもしれません。
しかし、耳だれが出るということは、耳のどこかで炎症・化膿が起こっているサインのほか、頭が原因で髄液が漏れている場合や重篤な病気が隠れている場合もあります。
特に、耳に慢性的な症状がある方、耳だれ以外にめまい・物が見えにくいなどの神経症状や聞こえづらい(難聴)症状を伴っている方、糖尿病の方、最近頭に大けがや手術をした方などは、早めにご来院いただいた方が良いでしょう。
たかが「耳だれ」と思わず、耳だれ(耳漏)がある方は、お気軽に当院までご相談ください。