耳の症状

耳が痛い(耳痛)

耳が痛い(耳痛)

「耳が痛い(耳痛)」と耳鼻咽喉科を受診される方は、お子さんだけでなく大人の方でも意外と多いのです。

耳が痛くなる(耳痛)原因は、主に耳に炎症が起こる疾患で、お子さんの場合は「急性中耳炎」、大人の場合には「外耳炎」が多く見られます。
ほかにも、ムンプスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスなどのウイルス感染、耳の周囲にある顎・喉の炎症や腫瘍が原因となる場合もあります。

「耳の痛み」に加えて、顔が動かない(顔面麻痺)、聞こえづらい(難聴)、めまいといった症状がある場合には、後遺症を残す可能性のある「ハント症候群」の疑いがあります。
緊急性が高いため、すぐにご来院ください。

耳の痛み(耳痛)に対する治療は、鎮痛剤の服用を基本として、原因によって抗生物質や抗ウイルス薬、ステロイド剤などの薬物療法、鼓膜切開、腫瘍切開など外科的手術を行う場合もあります。

耳の痛み(耳痛)がある方は、痛みが治ったとしても早めに当院までご相談ください。

「耳の痛み(耳痛)」の原因は?

1)耳の炎症

耳が痛くなる原因のほとんどが、耳の炎症によるものです。

急性中耳炎
お子さんの耳の痛みで、一番多い理由です。
鼻水・鼻づまりなど風邪がきっかけとなり、鼻から入ったウイルス・細菌が耳管(鼻と耳をつなぐ管)を通じて耳に入ることで、急な耳の痛み、耳だれ、発熱が起こります。
乳幼児の場合、不機嫌になったり、泣いたりします。
特に、3歳以下で保育園に通っている乳幼児は、重症化や繰り返して発症しやすいので、注意が必要です。鼓膜の状態によっては、鼓膜切開を行います。

鼓膜炎
鼓膜に水疱ができる水疱性鼓膜炎の場合には、激しい耳の痛みが生じます。
原因は明確になっていませんが、鼓膜に肺炎球菌・マイコプラズマ菌などのウイルスや細菌が感染することで、発症すると考えられています。
片耳で起こりやすく、20~40代の女性に多い傾向があります。
中耳炎を合併した際に、まれに難聴を起こすことがあるので、耳鳴りが伴うときはすぐにご来院ください。

外耳炎
大人の耳の痛みでよくある原因です。
耳の穴から鼓膜までの部分(外耳)を指の爪などでかいたり、綿棒で耳かきをするときに外耳道を傷つけてしまったりすることで、細菌が入り炎症して痛みます。
毎日お風呂上りに耳かきをする人、耳栓をして泳いでいる人やよく耳を触る癖がある人はなりやすく、比較的若い女性に多い傾向があります。

(画像)メディカルイラスト図鑑|耳の構造図

2)ウイルス感染

おたふく風邪(流行性耳下腺炎)
幼児や児童に多く、ムンプスウイルスが原因です。(※大人でもうつります。)
耳下腺(耳の下)が痛くなって、腫れてきます。腫れは数日~10日くらい続き、38度前後の熱が出ることがあります。
学校保健安全法により、耳下腺の腫れから5日間、さらに全身状態が良好になるまでは出席停止となります。

耳性帯状疱疹(じせいたいじょうほうしん)
一般的に水ぼうそうに感染すると、症状が改善しても原因となった“水痘・帯状疱疹ウイルス”は、体内(神経節など)に残ったままになります。
成人後、何らかの理由で免疫が下がったときに再びウイルスが活性化して、耳を中心に「帯状疱疹」として現れると、激しい痛みが生じます。

ハント症候群
耳性帯状疱疹と同じ体内に残った水痘・帯状疱疹ウイルスが、顔面神経を障害すると発症するとされています。耳の痛みのほか、難聴やめまい・顔面神経麻痺などが現れます。発症から治療開始が遅れる程、顔面麻痺など後遺症を残す確率が高くなるので、疑われたら1日でも早く治療を開始する必要があります。

3)外傷・圧外傷

外傷性鼓膜穿孔(がいしょうせいこまくせんこう)
耳かきを誤って深く入れてしまったなどにより、鼓膜が破れてしまった状態です。

耳介血腫(じかいけっしゅ)
レスリングや柔道をしている方に多くみられます。
耳への圧迫刺激を繰り返すことで、皮膚内に血が溜まり、耳が腫れて痛みます。

航空性中耳炎・気圧性中耳炎
飛行機の離着陸や潜水時に、外気圧と耳の鼓膜の中の圧力(内気圧)の均衡が崩れると、耳が痛くなります。

4)腫瘍

扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういしゅよう)
喉の奥にある、いわゆる扁桃線(口蓋扁桃)の炎症がひどくなり、扁桃線の周囲まで広がって、痛みや腫れ・膿が溜まります。

5)外耳道異物

外耳道に虫やおもちゃなど異物が入った状態です。
自分で取ろうとして、より取り出しにくくなることもよくあるので、取れなくなったら早めに専門医へお任せください。顕微鏡を使って確認しながら、除去します。

6)喉や顎の炎症

耳に異常がなくても、喉や顎の炎症で耳の痛みを感じる場合があります。

顎関節症(がくかんせつしょう)
口を開けたときに痛くなる特徴があり、耳の穴の前にある顎(がく)関節の痛みを耳の痛みとして感じます。

扁桃炎(へんとうえん)
耳と喉は、耳管(じかん)という管でつながっており、同じ神経が感覚を支配しているため、喉の炎症で神経が刺激されると、耳が痛く感じることもあります。

耳が痛い(耳痛)場合の検査

問診・視診

耳が痛くなる前に「風邪の症状がなかったか?」「耳をいじらなかったか?」など、詳しくお伺いし、内視鏡カメラを使って、鼓膜や外耳の状態を丁寧に確認します。
当院の内視鏡カメラによる検査では、患者様も一緒に状態を見ることができます。

また、耳に異常がなかった場合には、顎の関節や首のリンパ節などを触診して、炎症していないかを確認します。

ほかにも、難聴が疑われる場合には「聴力検査」、耳だれがある場合には「細菌培養検査」を行う場合もあります。

耳の痛み(耳痛)の治療法

薬物療法

耳の痛み(耳痛)の治療には、鎮痛薬を使用します。
そのほか原因に応じて、抗生物質や抗ウイルス薬、ステロイド剤なども併用します。

外科的手術

・中耳炎などにより、鼓膜の腫れが強い場合には、鼓膜切開を行います。
・「急性乳様突起炎(きゅうせいにゅうようとっきえん)」*1や扁桃周囲腫瘍が原因の場合には、手術で膿を排出させます。
*1急性乳様突起炎:中耳炎の治療が不十分だと起こります。耳の後ろが腫れて盛り上がり、痛みを伴います。難聴や敗血症、髄膜炎など怖い合併症を伴うことがあるので、早急に治療する必要があります。

よくあるご質問

耳が痛いときの応急処置は、どうすればよいですか?

お子さんが痛みで苦しんでいる姿は、親御さんにとっても非常に不安ですし、つらいものですよね。
しかし、お子さんの耳の痛みの多くは、「急性中耳炎」によるものですので、心配ありません。
中耳炎の場合、鼓膜が腫れあがるまで強く痛みますが、自然に鼓膜が破けて、耳だれが出てくると痛みは軽くなります。
また、大人の場合には「外耳炎」が原因となることも多いですが、こちらも緊急性はありません。

耳の痛みを抑えるには、ひとまずお手持ちの解熱鎮痛薬(カロナールやアセトアミノフェン、アンヒバなど)を使用すると良いでしょう。
そして、翌日当院へご来院ください。

なお、急性中耳炎は、難聴を伴う「滲出性(しんしゅつせい)中耳炎」へ移行することがあります。
痛みが軽くなっても中耳炎は治っていませんので、必ず翌日に耳鼻咽喉科を受診しましょう。

まとめ

耳は、とても痛みに敏感な場所です。

耳の炎症が原因となること以外に、鼻・口・喉の奥には、耳を支配している神経と同じ神経が通っているため、鼻・口・喉に炎症が起こった場合でも、耳が痛くなることがあるのです。

当院では、内視鏡検査の際、患者様と一緒に耳の中や喉の状態を確認できるように2つのモニターを設置して、「目で見て納得できる医療」を提供しています。
「耳の痛み(耳痛)」がある方や耳周辺に異常を感じた方は、お気軽に当院までご相談ください。

記事執筆者

記事執筆者

馬込駅前あくつ小児科耳鼻咽喉科
院長 岩澤 敬

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医
日本めまい平衡学会 めまい相談医

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西馬込あくつ耳鼻咽喉科
院長 阿久津 征利

日本耳鼻咽喉科学会 専門医
日本めまい平衡医学会 めまい相談医
臨床分子栄養医学研究会 認定医

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耳の症状

  1. 耳鳴り

    耳鳴りは、人口1,000人あたり、男性26.3人、女性31.8人に自覚症状があるというデータより、大田区全体では約21,000人、馬込地区では約1,600人と、多くの患者さんが悩まれている症状です。

  2. 耳閉感(耳づまり)

    耳の奥がこもり、詰まった感じがすることを「耳閉感(じへいかん)」といいます。 人によっては、「膜が張っているような感じ」「水が入った感じ」などと表現する場合もあります。

  3. 難聴

    難聴とは、何らかの原因で聴力が低下し、言葉や音が聞こえにくくなる状態です。

  4. 耳がかゆい

    「耳がかゆい」という理由で耳鼻咽喉科を受診する方は意外と多く、特に若い女性に多い傾向です。最近では、テレワークや在宅になったことで、イヤホンを使う機会が増えたり、自宅で耳掃除をする機会が増えています。原因の多くは、耳掃除のやり過ぎ・耳の触り過ぎによる「外耳道湿疹」「外耳(道)炎」です。ほかにも、耳あかが溜まっている・耳の中の乾燥・外耳真菌症・喉の炎症やアレルギー性鼻炎によるものがあります。

  5. 耳あか(耳垢)

    「耳あか(耳垢:じこう)」とは、読んで字のごとく、耳の中に付着した垢(あか)のことです。

  6. 耳だれがでる(耳漏)

    「耳だれがでる(耳漏:じろう)」とは、耳から液体が出てくることで、主に耳のどこかで炎症・化膿が起こっているサインです。

  7. 耳が痛い(耳痛)

    耳が痛くなる(耳痛)原因は、主に耳に炎症が起こる疾患で、お子さんの場合は「急性中耳炎」、大人の場合には「外耳炎」が多く見られます。 ほかにも、ムンプスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスなどのウイルス感染、耳の周囲にある顎・喉の炎症や腫瘍が原因となる場合もあります。