耳の病気

急性中耳炎

急性中耳炎の症状について

急性中耳炎は急に耳が痛くなる(耳痛)、耳だれが出る(耳漏)、発熱が主な症状です。しかし乳幼児では耳が痛いと言うのを訴えることができず、不機嫌になったり、泣いたりして耳の具合の悪さを表現します。急性中耳炎は、1歳までに30%、2歳までに50%、3歳までに70%の子供がなると言われており、とても身近な病気です。

38度以上の発熱が3日以上続き小児科を受診した0~2歳児を対象に調べた先生がいます。その結果では、0歳児では69.2%、1歳児では41%、2歳児では57.9%が急性中耳炎でした。乳幼児の発熱の原因の多くは、急性中耳炎であることがわかります。

急性中耳炎が流行するのは、風邪が流行る冬場と、新学期を迎える4月から6月です。 4月から保育園に入り、中耳炎を繰り返すと言う子供が大変多いです。

急性中耳炎の原因は?

急性中耳炎の原因は風邪などの上気道感染症です。風邪や副鼻腔炎により鼻の突き当たり(上咽頭)に炎症が起こり、耳管を介して中耳に入り中耳炎が起こります。
子供の耳管は太く、短く、水平のため、中耳炎がとても起こりやすい状態です。子供は鼻風邪(副鼻腔炎)からの炎症波及のことが多いです。

重症度をどのように評価しているか?

小児急性中耳炎診療ガイドライン(日本耳科学会)に沿って判断しています。具体的には臨床症状、年齢、鼓膜所見から評価しています。評価により抗生剤の種類を決定します。
当院では内視鏡カメラを使った鼓膜所見の評価を主にしています。
それによりご家族の方でも一緒に鼓膜の状態を見ることができ、長く通っている患者様のご家族は、
「中耳炎ですね」や
「まだ治ってないですね」と言う時もあります。

なぜ当院では内視鏡カメラを使った鼓膜の評価をしているか?

急性中耳炎の評価方法として、内視鏡カメラが急性中耳炎を最も正確に推定できたと言う報告がされているためです。
当院では、急性中耳炎の見逃しがないように細心の注意を払って検査を行っております。
内視鏡カメラを耳にいれると、少しくすぐったい感じもありますが、痛みはありません。時間も2~3秒程度で終わります。
内視鏡カメラでは、誰でもリアルタイムに閲覧ができ、記録保存が容易で、前回との比較が容易にでき、新生児や乳児の鼓膜所見も簡単に見ることが可能です。
耳鏡(医師が患者さんの耳の近くで診察する機器) では、診察している医師のみしか見ることができず、また新生児や乳児など外耳道が狭い患者様に対してはかなり見ることが難しいです。耳鏡だけでは、医師も悩むことがあり、そういった場合は内視鏡カメラを用いることでより当院ではより確実な診断をしています。

急性中耳炎の治療について

急性中耳炎の多くは、細菌感染が原因です。そのため抗生剤での治療を基本としています。
多くの抗生剤は1日3回の内服が基本となります。しかしながらお子様によっては保育園に通っていて、お昼の内服ができない場合もありますので、1日2回でも十分な効果を発揮できる抗生剤の処方を行っています。
最近では、抗生剤に対する耐性菌が出現しているため抗生剤の投与でも効果がない場合もあります。通常は抗生剤を投与して3日後に判定する場合が多く、改善がない場合は抗生剤の変更や鼓膜切開を行う場合もあります。

よくあるご質問

1)急性中耳炎であれば必ず抗生剤が必要ですか?

2歳以上で、鼓膜所見が軽症の場合、抗生剤を使用しなくても改善する場合が多いと考えられます。その場合は、抗生剤を投与しなくても良いと判断し、鎮痛剤のみを処方します。3日後に鼓膜を再評価し、改善しているかをチェックします。

2)夜中に子供が急に耳が痛いと泣き出してしまった場合はどうしたらよいか?

子供が耳が痛いと訴え激しく泣き出すと親としてはとても不安ですし、動揺もしますよね。
まずは慌てる必要は無いので子供を安心させることが必要です。家にある解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンが主成分のもの)を使用すると効果的です。急性中耳炎で、解熱鎮痛剤を用いる事は日本だけでなく世界の標準治療であり、有効的な治療方法になります。
東京都の場合(当院が東京都大田区のため)、#7119に電話することで、適切な対応を教えてもらえます。
以下の場合はすぐに耳鼻咽喉科医院の診察を受けたほうが良いかと思います。
・痛みが強く39度以上の発熱がある
・全体的にぐったりとしていて元気がない
・耳の後ろが腫れている
・解熱鎮痛薬を使っていても痛みと発熱の悪化がある

3)鼓膜切開をした場合はどうなるか?

可能な限り鼓膜切開をしないよう治療を進めていきますが、万が一鼓膜切開する場合は特に注意をして行います。
当院では、まず鼓膜に十分な麻酔をし(じっと横になれるお子様であれば麻酔が浸透し効きやすくなるような機器を使います)、切開しても後が残らないように切開する場所を工夫しております。切開後は、どのような細菌がいるかをチェックをし(培養検査)、耳にたらす薬(点耳薬) をお出します。

4)急性中耳炎はどういった子になりやすいか?

両親の喫煙、兄弟が多い、保育園に預けているなどが急性中耳炎になりやすいリスクとなります。兄弟や保育園などは仕方がない部分はありますが、喫煙だけは防ぐことができます。ご両親で喫煙をされている場合は、ぜひ禁煙外来をしているクリニックを受診してください。
馬込地区近辺では、以下のクリニックで禁煙外来を実施しています。
https://goo.gl/PxVEBp
また、RSウィルス感染と診断された子供の52%が中耳炎が合併がするという報告もあります。RSウイルスと診断されて原因が分かって一安心せず、鼓膜の状態もしっかりと診てもらうと良いです。

急性中耳炎と予防接種の関係

急性中耳炎の原因となる菌は、インフルエンザ桿菌、肺炎球菌、モラキセラ・カタラーリスの3つの菌となります。
このうち、インフルエンザ桿菌(ヒブワクチン)と肺炎球菌はワクチン接種があります。
ヒブワクチンは細菌性髄膜炎の予防として導入された予防接種になります。インフルエンザ桿菌にはいくつかのタイプがあり、実は細菌性髄膜炎と急性中耳炎のインフルエンザ桿菌とはタイプが異なるため、ヒブワクチンを打っていても、インフルエンザ桿菌によって急性中耳炎になることがあります。
一方で、肺炎球菌ワクチンは急性中耳炎の予防には有用です。これは急性中耳炎の原因になる肺炎球菌をカバーしたワクチンだからです。
急性中耳炎の予防接種による予防効果は6%と言われています。少ないと思われるかもしれませんが、繰り返す中耳炎の予防効果もあり、また鼓膜にチューブを留置する症例も減りとても有用な方法です。

まとめ

急性中耳炎はとても身近な病気です。
鼓膜を評価することは、時には難しいこともあり、疑わしい時は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
急性中耳炎は、通常は抗生剤にて治りますが、時には鼓膜切開が必要な場合があります。
予防接種は急性中耳炎の予防に効果的です。

記事執筆者

記事執筆者

馬込駅前あくつ小児科耳鼻咽喉科
院長 岩澤 敬

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医
日本めまい平衡学会 めまい相談医

詳しい院長紹介はこちら

馬込駅前院 予約

西馬込あくつ耳鼻咽喉科
院長 阿久津 征利

日本耳鼻咽喉科学会 専門医
日本めまい平衡医学会 めまい相談医
臨床分子栄養医学研究会 認定医

詳しい院長紹介はこちら

西馬込院 予約

耳の病気

  1. 急性中耳炎

    急性中耳炎

    急性中耳炎は急に耳が痛くなる(耳痛)、耳だれが出る(耳漏)、発熱が主な症状です。しかし乳幼児では耳が痛いと言うのを訴えることができず、不機嫌になったり、泣いたりして耳の具合の悪さを表現します。急性中耳炎は、1歳までに30%、2歳までに50%、3歳までに70%の子供がなると言われており、とても身近な病気です。

  2. 滲出性中耳炎

    滲出性中耳炎とは子供・大人ともに薬だけでは治らない事があり手術(鼓膜換気チューブ)になることもある病気です。子供の中耳炎は鼻風邪(鼻水)が原因で起こり、薬・漢方薬・器具を使った治療(オトベント)があります。大人の滲出性中耳炎がある場合は、鼻腔内・上咽頭に炎症や腫瘍がないかを確認する必要があります。

  3. 外耳炎(耳かきしてから耳が痛い)

    外耳炎は“外耳道炎”とも呼ばれ、耳の穴から鼓膜の手前までの外耳道に炎症が起こり、耳のかゆみ・耳の痛みが現れ、さらに外耳道が腫れると、耳が聞こえづらくなる(難聴)、耳が詰まった感じ(閉そく感)を伴います。

  4. メニエール病

    メニエール病は30~50代の女性に多い疾患で、めまいが突然現れ、同時に吐き気・難聴・耳鳴り・耳の閉そく感(詰まる感じ)などの症状も起こります。

  5. 良性発作性頭位めまい症

    良性発作性頭位めまい症は、耳の奥の「内耳(ないじ)」にある三半規管(さんはんきかん)と、耳石器(じせきき)という器官の障害で起こります。頭を大きく動かした時やある一定の頭の向きになった時に、ぐるぐる回転するようなめまいが起きるのが大きな特徴です。

  6. 耳管開放症

    耳管開放症は、軽症例では自然治癒することもありますが、不快症状が続くと、ストレスとなり日常生活に支障を来すことも。耳抜きで一時的に軽快することがあります。症状は、自分の声が響くなど。原因は、ダイエット、妊娠中、ピル内服など。治し方・治療は、漢方薬などの薬物治療が中心となります。

  7. 耳管狭窄症

    耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)とは、鼻の奥と耳をつなぎ、耳の中の圧力を調整する働きを持つ“耳管”と呼ばれる管が、狭くなってしまう病気です。 耳管が塞がってしまうと、耳が詰まった・こもった感じ(閉そく感)になったり、聞こえが悪くなったりする症状が現れます。 また、長引くと難聴が進行する恐れのある滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)を合併する場合もあるので、注意が必要です。

  8. 補聴器相談

    「聞こえが悪くなってきたら、補聴器を使おう!」と思う方も多くいらっしゃるでしょう。 しかし、補聴器は買って耳に付けたらすぐ使える(聞こえる)ようになるものではなく、その人に「合う・合わない」があるのです。 そのため、「補聴器を買おうかな」思っている方でも、まだ補聴器が必要ではないケースも多く存在します。