耳の症状

耳鳴り

耳鳴り

「耳鳴り」とは、実際に外で音が鳴っていないのに、耳や頭の中で異音・雑音が聞こえるように感じる現象です。

耳鳴りは、人口1,000人あたり、男性26.3人、女性31.8人に自覚症状があるというデータより、大田区全体では約21,000人、馬込地区では約1,600人と、多くの患者さんが悩まれている症状です。

耳鳴りが起こる原因は色々あり、疾患(突発性難聴・メニエール病・聴神経腫瘍・中耳炎など)だけでなく、加齢によるもの、騒音に曝される、筋肉のけいれん、さらにはストレス・睡眠不足・疲労なども引き金になります。

しかし、耳鳴りで今すぐ生命の危険を伴ったり、将来的に致命的な疾患に繋がったりするものはほとんどありません!

しっかり耳鳴りの仕組みを知って、危険なものではないと理解することが、耳鳴りの治療で一番大切なことです。
症状に気付いたら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

耳鳴りのタイプ・聞こえる耳鳴りの音から考えられる病気とは?

原因によって、耳鳴りで聞こえる音に違いや特徴があります。(※個人差あり)

1)「キーン」「ピー」など高音の耳鳴り

耳を塞いでみると、音が大きく聞こえる特徴があり、金属音や電子音のような擬音で表現されます。

・突発性難聴

突然音が聞こえなくなる病気で、片耳だけの耳鳴りや片耳が聞こえなくなる(難聴)、めまいが現れます。
ストレスに関係しているとも考えられていますが、明確な原因は今のところ不明です。

異変を感じたら、できるだけ早く(症状が現れてから2週間以内)に治療を開始しないと、聴力が回復しない場合があるので、すぐに受診して下さい。

・メニエール病

30~50代女性に多く、10分~数時間と持続時間の長い回転性めまい(ぐるぐる回る)を突然起こす病気です。
内耳のリンパ液が増える「内リンパ水腫」が原因ですが、その発生要因は分かっていません。

めまいの前後に、片耳だけの耳鳴り、吐き気・嘔吐、難聴、耳が詰まる感じも現れます。
突発性難聴と似ていますが、回転性めまいを何度も繰り返す点に違いがあります。

メニエール病についてはこちらで詳しく記載されています
https://www.magojibi.jp/course/meniere

・聴神経腫瘍

年間10万人に1人程度の発症頻度とされ、熟年の女性に多い脳腫瘍の一種ですが、ほとんどが良性腫瘍です。

ふらっとするようなめまいや片耳だけ耳鳴り・聞き取りにくさ(難聴)が現れます。

疑われる場合には、「造影MRI検査」など詳細な検査をする必要があります。

・老人性難聴

耳鳴りが起こる原因の中で一番多く、耳の奥にある内耳の蝸牛(かぎゅう)部分の有毛細胞(音を感じ取る細胞)が、老化によって壊れてしまうことが原因となります。
50・60代になると多くなりますが、早い人だと40代から起こる場合もあります。

両耳の耳鳴りや聞き取りにくさ(難聴)が現れます。

・音響外傷

コンサートやクラブで大音量を聞いたり、ヘッドホンで長時間大きめの音を聞いていたりすることで、両耳の耳鳴り・耳の痛み・聞こえづらくなる(難聴)ことが現れます。

軽症であれば、一時的な耳鳴りや難聴で済みますが、翌日以降も明らかに聞こえづらかったり、耳が痛かったりする場合には、治療が必要です。

・薬剤性難聴

耳に影響を及ぼす可能性のある薬(一部の抗生物質など)を使用した場合、耳鳴りが起こります。

・自律神経失調症

ストレスや疲労・睡眠不足の場合にも、一時的に「キーン」「ピー」などの耳鳴りが聞こえることがあります。
すぐに治まる場合には心配ありませんが、耳鳴りがしている状態に対し、ストレスを感じてしまい、つらく感じる場合には治療をした方が良いでしょう。

2)「ブーン」「ボー」「ゴォー」「ザー」など重低音の耳鳴り

耳が詰まったような感覚(閉そく感)があり、耳を塞いでみると、音が小さく感じます。
トンネルを通過する時のように低く響く音、エアコンの風、ボイラー等の音のような擬音で表現されます。

肩や首の凝りなど一過性の身体異常やストレスなどが原因の場合も多く、高音の耳鳴りよりも危険性は少ないです。

・メニエール病

「ブーン」「ザー」というような低音耳鳴りが聞こえることもあります。

・低音障害型感音難聴

メニエール病の「めまい」がない症状で、片耳だけ低音が聞こえづらくなる(難聴)、低音の耳鳴りが現れます。
突発性難聴よりも症状が軽く、聴力が回復しやすい傾向があります。

・中耳炎・耳管狭窄など

風邪などが原因となることが多い滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)や耳管狭窄(じかんきょうさく)など、中耳や耳管に異常が起こっている場合にも、低音の耳鳴りが起こることがあります。

・肩・首の凝り、疲労・ストレス・急な気圧の変化

首や肩が凝っているなど一過性の身体的異常がある場合にも、低音の耳鳴りがすることがあります。

3)「ブクブク」「ポコポコ」「グググ」「コツコツ」など不定期に聞こえる耳鳴り

・耳付近の筋肉の痙攣

耳の周りや耳小骨に付いている筋肉のけいれんによって音が発生して、耳鳴りとなって聞こえます。

4)「ガサガサ」「ゴソゴソ」と聞こえる耳鳴り

・耳垢の動きの音

・耳に虫が入った場合

耳垢や虫が耳に入った場合にも、ガサガサするような耳鳴りが聞こえます。

5)「シャー」「ジョー」「ドクドク」「ドコドコ」など持続的に聞こえる耳鳴り

・脳梗塞・脳出血の前兆

・脳腫瘍による血管の圧迫

・外リンパ瘻

などが発生しているサインの時があります。

特に、心臓の拍動と一緒に聞こえる「ドクドク」などの拍動性耳鳴りには重大な疾患のサインである可能性が高いため、耳鼻科だけでなく、脳神経外科・循環器内科などでMRI検査・超音波など精密検査を受けた方が良いでしょう

耳鳴りの検査

耳鳴りの多くは、自覚的耳鳴(じかくてきじめい)として、ご本人以外は聞こえない音です。
また、耳鳴りの感じ方には個人差があるため、様々な問診表や検査を組み合わせて行い、病態およびその度合いを客観的に評価・診断します。

①問診

・THI 耳鳴障害度問診表
耳鳴りがする部位(左右、両耳、頭蓋内など)や感じる耳鳴りの表現(キーン、ジーンなど)、耳鳴りの大きさ、持続時間、苦痛度などをスコア化して、重症度を調べます。

また、耳鳴りで悩んでいる患者様の中には、精神的な不安を抱えている場合や睡眠障害がみられることがあるため、次のような問診表を使用することがあります。

・SDS うつ病自己評価尺度
・STAI 特性不安検査
・PSQI ピッツバーグ睡眠質問票

②聴力検査

純粋に聞こえの検査のほか、ティンパノメトリー(鼓膜の検査)や耳の奥の筋肉の動きを見る検査も行う場合があります。

③耳鳴検査

聴力検査機器から出る音から、耳鳴りで聞こえている音に近い周波数や大きさを調べる検査です。

④MRI検査・MRA検査

拍動性耳鳴りがしている場合、聴神経腫瘍などが疑われる場合には、近隣の紹介先病院にて行っていただくことがあります。

ほかにも「血液検査」やめまいを伴う場合には「平衡機能検査」を行う場合もあります。

耳鳴りの治療法

残念ながら、耳鳴りの特効薬はありません。

耳鳴りの原因が明らかになっている場合には、原因となっている疾患の治療を行うことで、耳鳴りが治る可能性があります。
滲出性中耳炎や聴神経腫瘍などは、必要に応じ外科的手術を行う場合もあります。

薬物療法

原因と考えられる疾患への対症療法として、ステロイド製剤・血管拡張剤、内耳の循環改善剤、ビタミン剤、抗不安剤、抗うつ薬、抗けいれん薬、漢方薬など、組み合わせて処方します。
・突発性難聴(早期治療で効果アリ)や音響性難聴
→ステロイド製剤・血管拡張剤、内耳の循環改善剤、ビタミンB3,ビタミンB12など
・メニエール病
→抗不安薬・利尿剤・ビタミン剤など

しかし、原因不明の場合や薬物療法をしても完全に耳鳴りが消失しないケースも多く見られます。
近年は耳鳴りのつらさを緩和して、耳鳴りを気にならなくする新しい治療法も行われています。

音響療法

小さな音(波の音や小川のせせらぎなど)を発生させて、耳鳴りに対する意識をそらすことで耳鳴りを改善させる治療法です。

(指示的)カウンセリング
耳鳴りになったことがストレスとなり、より耳鳴りが悪化する場合があります。
そんな時は、患者様が持つ漠然とした不安や苦痛を伺う一般的なカウンセリングに加え、耳鳴りが起こるメカニズムなど医師が詳しく説明します。
「耳鳴りの知識」を学び、正しく理解してもらうことで、耳鳴りの症状そのものがストレスとなって、より悪化するような悪循環を防ぐ(断ち切る)目的で行います。

TRT療法(Tinnitus Retraining Therapy):耳鳴順応療法

欧米を中心に行われており、日本でも10年前くらいから広まってきた新しい治療法です。
TRT療法では、「音響療法」と「指示的カウンセリング(耳鳴りに対する正しい理解・知識を学ばせること)」を組み合わせています。

耳鳴りを完全消失させるのではなく、“耳鳴りとの共存を目的“として、耳鳴りを気にしなくさせる治療法です。
基本的には、6か月以上耳鳴りに悩まされている慢性の方や耳鳴りによる生活障害度の高い方が対象となり、治療には数か月から数年かかります。
現在のところ、日本では対応している病院が限られていますが、早期に取り入れた病院で約7~8割の患者さんに有効性があったというデータがあります。

認知行動療法

耳鳴りが慢性化し、耐え難い苦痛を感じている患者様の場合、どうしても「耳鳴りのせいで、自分のいる世界は苦しくてつらい」と考えがちです。
そのような偏った考え方から「少しくらい耳鳴りを感じても、普通に生活できている」という認識ができるように考え方を変えるサポートをします。

よくあるご質問

1)たまに耳鳴りがしますが、病院へ行った方が良いのでしょうか?

ストレスや寝不足の時、飛行機の離着陸時、トンネルに入った時など、誰でも一度くらいは突然「キーン」と耳鳴りがしたことがあると思います。
耳鳴りがしても数秒で消えるのであれば、特に心配ありません。

しかし、何か月も耳鳴りが続いていたり、ずっと聞こえていて、気になって仕方なかったり、日常生活に支障を来しているのであれば、治療することをおすすめします。

2)耳鳴りが気になって眠れません。どうすれば眠れますか?

「日中はあまり気にならないのに、夜になると耳鳴りが気になる」という方が多くいらっしゃいます。

日中は様々な生活音が耳に入ってくるため、耳鳴りの音が紛れやすく、気になりにくい環境ですが、夜は「静かな環境」の場合が多いため、気になりやすくなるのです。

耳鳴りが気になって眠れないときには、あまり気にならないような静かな音楽やラジオをかけながら、ゆったりした気持ちで眠りにつくと良いでしょう。
ただし、好きなアーティストやアップテンポの曲だと、逆に興奮してしまって目が覚めてしまうこともあるので、ご注意ください。

それでも、どうしても夜眠れないことが続く、耳鳴りが悪化していると感じる場合には、早めに病院を受診しましょう。

3)耳鳴りの予防法や対処法はありますか?

耳鳴りの発症には、ストレス・睡眠不足・疲労が大いに影響を与えているとされています。
耳鳴りを悪化させるのも、またストレスが関係しているのです。

運動、カラオケ、おしゃべり、アロマテラピーなど、趣味や興味のあることを積極的に行って、日々の生活に“楽しみ”を取り入れて、ストレスフリーな生活を送るようにしましょう。

また、寝不足の場合、身体や脳の疲れが取れず、続くと精神的にも不安定になりやすく、免疫力も下がります。
きちんと栄養を摂り、適度な運動もして、十分な睡眠を取れるよう、規則正しい生活を送りましょう。

まとめ

一時的な耳鳴りは、誰にでも起こりうるものなので、心配ありません。
しかし、片耳だけの耳鳴りや歩行・バランス維持が困難な場合、めまい、発語しにくいといった神経症状を伴っている場合には、速やかに病院を受診しましょう。

また、耳鳴りは気にすれば気にするほど、精神的にもつらくなり余計悪化し、悪化すれば仕事や日常生活に重大な支障を来たすこともある“厄介な病気”です。

当院では耳鳴りのメカニズムを詳しくお話しして、患者様に「耳鳴りは生命を脅かすような危険なものではない」ときちんと理解していただき、治療を進めていけるよう努めています。

耳鳴りは発症後早く治療を始めることで、比較的その後の経過が良い傾向があります。
「あれ、何か頭の中で音が聞こえるな」と思ったら、いつでもお気軽にご相談下さい。

記事執筆者

記事執筆者

馬込駅前あくつ小児科耳鼻咽喉科
院長 岩澤 敬

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医
日本めまい平衡学会 めまい相談医

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馬込駅前院 予約

西馬込あくつ耳鼻咽喉科
院長 阿久津 征利

日本耳鼻咽喉科学会 専門医
日本めまい平衡医学会 めまい相談医
臨床分子栄養医学研究会 認定医

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耳の症状

  1. 耳鳴り

    耳鳴りは、人口1,000人あたり、男性26.3人、女性31.8人に自覚症状があるというデータより、大田区全体では約21,000人、馬込地区では約1,600人と、多くの患者さんが悩まれている症状です。

  2. 耳閉感(耳づまり)

    耳の奥がこもり、詰まった感じがすることを「耳閉感(じへいかん)」といいます。 人によっては、「膜が張っているような感じ」「水が入った感じ」などと表現する場合もあります。

  3. 難聴

    難聴とは、何らかの原因で聴力が低下し、言葉や音が聞こえにくくなる状態です。

  4. 耳がかゆい

    「耳がかゆい」という理由で耳鼻咽喉科を受診する方は意外と多く、特に若い女性に多い傾向です。最近では、テレワークや在宅になったことで、イヤホンを使う機会が増えたり、自宅で耳掃除をする機会が増えています。原因の多くは、耳掃除のやり過ぎ・耳の触り過ぎによる「外耳道湿疹」「外耳(道)炎」です。ほかにも、耳あかが溜まっている・耳の中の乾燥・外耳真菌症・喉の炎症やアレルギー性鼻炎によるものがあります。

  5. 耳あか(耳垢)

    「耳あか(耳垢:じこう)」とは、読んで字のごとく、耳の中に付着した垢(あか)のことです。

  6. 耳だれがでる(耳漏)

    「耳だれがでる(耳漏:じろう)」とは、耳から液体が出てくることで、主に耳のどこかで炎症・化膿が起こっているサインです。

  7. 耳が痛い(耳痛)

    耳が痛くなる(耳痛)原因は、主に耳に炎症が起こる疾患で、お子さんの場合は「急性中耳炎」、大人の場合には「外耳炎」が多く見られます。 ほかにも、ムンプスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスなどのウイルス感染、耳の周囲にある顎・喉の炎症や腫瘍が原因となる場合もあります。